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森田、伊達の「二枚看板」に明暗。
女子テニスフェド杯、激闘の教訓。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byAP/AFLO

posted2013/02/12 12:15

森田、伊達の「二枚看板」に明暗。女子テニスフェド杯、激闘の教訓。<Number Web> photograph by AP/AFLO

左からクルム伊達公子、村上武資監督、森田あゆみ。世界ランク57位の森田が、この大会では日の丸を背負って、そのランキング以上の素晴らしい活躍を見せた。

準決勝進出に王手をかけたところで舞台は暗転……。

 しかし、森田は前日と同じように、この相手も圧倒してしまう。ただ、内容は前日の試合とはひと味違った。森田の好調を見てとったベスニナは「多少のリスクを冒しても、攻撃的にプレーした」という。そのアタックを、森田はしっかり受け止め、跳ね返した。

「長いラリーで、打ち合い、走り合いになる展開が多かったが、自分が走り勝てた。しぶとさでも体力面でも相手を上回れた」

 以前は一本調子のプレーが目立った森田だが、この2試合では相手の出方を見ながら、攻守を出し入れした。ハードヒットだけでなく、ときには脚力や粘りを前面に押し出して戦った。こんな懐の深いプレーなら、20位と33位を相手に連勝という結果もうなずける。

 沸き立つ日本チームのベンチ。2-1と勝ち越し、あと1勝で17年ぶりの準決勝進出が決まる。

 しかし、ここで舞台は暗転した。伊達が、まさかの不調。攻撃的なショットにいつもの切れ味がなく、淡泊さも目立った。

出場を強行した伊達だったが、'96年のグラフ戦勝利の再現はならず。

 彼女は初日のシングルスで右足アキレス腱を痛めていた。誘因は特殊なコートサーフェスにあった。規格にかなったハードコートだったが、土台となる床材が影響しているのか、ボールのバウンドが安定しない。時には予測していたより速く、時には極端に遅く弾んでくる。また。コート面が足裏をしっかり押し返してくれないので、余計な体力を使う。

 伊達はその嫌な感じを「体力をじわじわむしばんでいくような」と表現した。案の定というべきか、古傷のアキレス腱が悲鳴を上げた。

 第2日のシングルスは最後まで出場を迷った。朝になっても炎症が残っている。薬を飲んで痛みは抑えたが、パフォーマンスが落ちるのは明白だった。

「今の状態でやるべきなのか。それとも、やめるべきなのか」

 伊達は出場を迷い、村上武資監督は控えの土居美咲の起用も考えた。それでも伊達は、一人気を吐く森田を見て「やらなきゃいけない」と腹をくくった。

 村上監督も決断する。

「今までこのチームは森田と伊達の二枚看板でやってきた。昔の話だが、ドイツ戦で(シュテフィ・)グラフに勝ったときも、(前の日に痛めた)左足を引きずりながら戦った。その力を信じて決めた」

 しかし、'96年東京・有明コロシアムの再現はならなかった。相手のマカロワも前日の屈辱を晴らすようなプレーを見せ、ハンディを負った伊達にチャンスを与えてくれなかった。

【次ページ】 伊達の口から漏れた、思いがけない言葉。

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