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パラグアイは日本と同じ「堅守速攻」。
メッシも封じた“包む”DFの怖さとは。 

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西部謙司

西部謙司Kenji Nishibe

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posted2010/06/28 06:00

パラグアイは日本と同じ「堅守速攻」。メッシも封じた“包む”DFの怖さとは。<Number Web> photograph by Getty Images

南米の過酷な環境で培われた「堅守速攻」の知恵。

 ブラジル、アルゼンチンを筆頭に、ウルグアイの近隣諸国には個人技に優れた選手が多い。カカやメッシの名前を挙げれば十分だろう。そのような環境で揉まれてきたことで、小国のパラグアイはいつしか「堅守速攻」という自らのスタイルを確立させた。今大会、決勝トーナメント1回戦で韓国を破った同じく南米のウルグアイも同様のスタイルをとっている。

 パラグアイが誇る「堅守速攻」は守備組織の堅固さによって支えられている。だが、そうした戦術的な“知識”以上に、実戦で培われた“知恵”が素晴らしいのがその守備力の特長といっていい。

 例えば、グループリーグ第2戦でぶつかったスロバキアとの一戦。スロバキアのMFベイスは小柄でキレのあるドリブルを得意としていたが、そのベイスに対しムキになってボールを奪いにいくのではなく、3人ぐらいでやんわり囲んで包むように奪っていた。慌てて飛び込んでいくと3人が次々にかわされてしまうかもしれない。そういう相手に対しては、まずプレッシャーをかけ、視線を下げさせてパスの可能性をなくした後、包むように囲んで自爆を待つ。

南米予選でメッシを封じた堅守をどう破るのか。

 こちらが突っ込むのでなく、ドリブラーに突っ込ませクラッシュさせる。南米予選でメッシに対したときも同じような守り方でそのドリブルを完封、1勝1分けでアルゼンチンに勝ち越している。こうした臨機応変な対処法に優れているのがパラグアイの守備の特徴と言えるのではないだろうか。今大会、日本代表は、松井や大久保らのサイドからの崩しが光っているが、“包む”守備にどう対処するのか。

 攻撃では、“アイドル”サンタクルスをはじめ、カルドソ、バルデスと泥臭く点をとれるタイプのストライカーが揃う。ただ、中盤にプレーメーカーがいないので、なかなかきれいに崩す形になりにくいのが現状だ。日本としては、ゴールゲッターをペナルティーエリア内に入れると厄介なので、その前にFWへのパスを遮断したい。

 過去の対戦成績は、日本の1勝3分2敗。'98年、トゥルシエ監督の下、コパ・アメリカで対戦した際には、フラット3の裏をサンタクルスらにつかれ、4-0と惨敗を喫したが、直近の2008年、キリンカップでの対戦では、0-0と引き分けている。いずれにせよ、圧倒的な攻撃力を誇るオランダを1点に抑えた今の日本の守備なら、パラグアイをゼロに抑えられるはず。

 問題は日本が得点できるかどうか。堅守速攻同士の激突なので、守り合いの展開になりそうである。

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