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侍ジャパンのムードメーカー宣言!
松田宣浩、WBC日本代表への道。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

PROFILE

photograph byYuji Arakawa

posted2013/01/08 10:30

侍ジャパンのムードメーカー宣言!松田宣浩、WBC日本代表への道。<Number Web> photograph by Yuji Arakawa

走攻守と揃った才能を持つ松田。チームメイトから“マッチ”と親しみを込めて呼ばれるほどの人気者になれるかどうかは、本番での活躍にかかっている!

打撃修正の追い風となった「統一球問題」。

 '08年は115三振と粗さが目立った。'09年は故障で46試合の出場に終わり、再起を誓った'10年も、本塁打こそ過去最高の19本と意地を見せたが打率は2割5分5厘と低迷。バットの芯でボールを捉えれば球界トップクラスの打球を放てる実力はある。しかし、確実性に欠ける打撃が松田の悩みの種でもあった。

 そんな苦悩する松田を救ったのは、打撃コーチの立花義家だった。

「バットが体から離れる癖がある。もっと溜めを大事にして打て」と、間合いの重要性を立花から説かれた松田は、'10年の秋季キャンプで右中間最深部へ強い打球を打つための練習を徹底的に行った。

 その成果が徐々に表れ始めた頃、さらに追い風となったのが、'11年から導入された統一球である。

 それまでは、どちらかというと打球が詰まることを恐れずに、体の近いところまでボールを呼び込んだほうが確実性は高いと言われていた。ところが、統一球でそれをしてしまうと打球が失速し、凡打が多くなってしまう。

 だが、元来、ミートポイントが手前である松田にとって統一球は好都合だった。

「前のボールなら体の中心でジャストミートできたら飛びましたけど、統一球は低反発だからそれだと力負けしてしまうんです。でも、体半分手前でミートすれば、スイングの力のほうが勝るからボールが飛びやすい。矛盾した表現になるかもしれませんけど、体は後ろに残しつつボールは前で打つイメージです。変化球に対応できないんじゃないかって思われるでしょうけど、そこはピッチャーとの駆け引きもあるだろうし、結局は感覚の問題なんでしょうね。それを'11年に覚えたのは大きかったです」

 バットを体に据え付け間合いを取るフォームからボールを手前で捌く松田のスタイルは、統一球にマッチする。

 リーグ2位の25本塁打。

 打率は3割に到達せず、三振も128と課題は残したものの、それ以上に、プロ入りして初めて全試合フルイニング出場を果たせたことに、手ごたえを感じた。

シーズンを通して安定した結果を残し、初めて意識できたWBC。

「この頃からですよ、WBCを意識できるようになったのは。『来年も活躍できたら確実に選ばれるな』と思いましたね」

 '10年の秋から打撃改造に着手し、'11年のシーズンを通して自分のものにできた形は、'12年、さらに安定する。8月に右手甲を骨折したせいで95試合の出場に留まったが、規定打席未到達ながらシーズンで1度も3割を切ることなく三振の数も63と、長年の課題だった確実性は明らかに高まった。

「骨折で2カ月も試合に出られませんでしたけど、数字の面ではよかったんで気にしても仕方がないというか。本当はですね、フルイニング出場してタイトルも獲って、胸を張ってジャパンに選ばれたかったんですけど、それはもう、心のなかにしまっておこうと思います」

 そう言って松田はおどけた表情を見せるが、万全な状態でないながらもキューバ戦の代表に選ばれたのは、彼がジャパンにとって必要な選手だったからに他ならない。

【次ページ】 国際大会で重要視するのは“データ”ではなく“感覚”。

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