W杯の1試合には、普段では考えられないくらい濃密な時間が流れているのかもしれない。
開幕直前、岡田武史監督はコンセプトを根底からひっくり返し、残り1カ月を切った状況で、“突貫工事”を始めた。守備のやり方さえ直前まで定まらず、とてもワールドカップを戦うレベルにはないと思われた。だが、彼らは南アフリカの地で3試合を戦うと、驚くほどの急成長を遂げることに成功する。
6月24日、E組最終節のデンマーク戦――。
ルステンブルクのピッチに現れた日本代表は、その10日前にカメルーンと戦ったチームとは別人かのように、アグレッシブで勇敢な集団に生まれ変わっていた。
新たな布陣で臨んだ日本代表は、一気に混乱に陥った!!
デンマーク戦の序盤は、相手のペースだった。
その原因のひとつは、この日、日本が新しいシステムを採用したことにあった。岡田監督はデンマーク相手に引き分け狙いの戦いをするのは危険と考え、これまでの3人のボランチを置く「4-3-2-1」ではなく、ボランチを1人減らした「4-2-3-1」のシステムを採用する。
遠藤保仁と阿部勇樹がボランチを組み、長谷部誠が右MFに、大久保嘉人がトップ下に置かれた。岡田監督は布陣をより攻撃的にすることで、チームに前へ行く意識を植え付けようとしたのである。
だが、その変更の隙を、デンマークが突いた。
トマソンがDFラインと2人のボランチの間に走りこみ、フリーでボールを受ける。「ゾーンディフェンスのチームには、DFラインとMFラインの間を突け」というサッカーの鉄則どおり、日本の守備を混乱に陥れた。「もし(3分の)シモン・ポウルセンのシュートが決まっていたら、試合は別のものになっていたはずだ」というオルセン監督のコメントは、決して負け惜しみではない。
すぐにシステム変更を決断した“新しい”岡田監督。
ただし、選手が大舞台で急成長したように、岡田監督も開幕前の「オカダ・タケシ」ではなかった。前半15分、すぐさまシステムをこれまでの4-3-2-1に戻し、問題点を修正したのである。
その直後に、今年何度もリプレイされるであろうFKの場面が訪れる。
前半17分、本田圭佑が祈りを込めるかのように両手でボールをセットし、左足を振りぬくと、公式球「ジャブラニ」はGKセーレンセンの手から逃れるようにネットに突き刺さった。
さらに前半30分、今度は遠藤保仁のFKがゴールに吸い込まれ、日本のダメ押し点が決まった。GKセーレンセンは、本田が蹴ると予想したのだろう。日本から向って、極端に左にポジションを取ってしまった。遠藤のカーブボールの餌食になった。記者会見でデンマークの記者から「なぜきちんとスカウティングしていなかったのか?」という質問が出るほど、セーレンセンの対応はお粗末だった。
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