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富豪オーナーの堪忍袋は破裂寸前。
トーレス不発でベニテスの首が飛ぶ?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/17 11:35
欧州王者の9番(写真左)トーレスと南米王者の9番ゲレーロ。世界一のクラブ、世界一のストライカーの座は南米のものとなった。
「失せろベニテス、お前の居場所などない」の歌声響く。
トーレスが先制ゴールを決めていれば、敵もカウンターに徹することはできず、試合は違った展開を見せていたと思われる。ところが、「ベニテスのチェルシー」のキーマンが力になれずに敗れたのでは、指揮官に対するファンの反感は強まる一方だ。
順当勝ちした準決勝モンテレイ戦(3-1)でも、スタンドで「失せろベニテス、お前の居場所などない」と歌ったイングランドからの一団は、全てを否定的に受け取り、更迭要求の声を高めるに違いない。
試合後のベニテスは、ボールを捌く技と共に、ボールを奪う力でも負けた点に関し、「南米勢にとっては本当のワールドカップも同然だ」と、クラブW杯に対する意気込みの差に触れた。
たしかに、コリンチャンスの勝利への執念は、中央を上がったアザールを瞬く間に3名が取り囲んで突進を止めた、53分の一場面などからも明らかだった。だが、チェルシーも、監督交代を招いたスランプを脱する一大転機として、負けられないはずだった。
必勝の一戦で、ベニテスは、チームの士気を十分に高めることができなかったとみなされかねない。
「世界一」を欲していたオーナーが、今季2度目の監督交代を!?
ネット上では、オスカルのベンチスタートを非難する書き込みや呟きが目立った。
ゴールに迫ったモーゼスの先発起用は失敗とは言い難いが、ブラジル人プレーメイカーが、相手陣営に負けじと、クラブW杯優勝にこだわっていたことは事実だ。
準決勝でのボランチ試用が当たったルイスを、CBに戻した点も争点となっていた。代わりに中盤に返り咲いたランパードは、前半、上々の出来を見せたが、約2カ月ぶりの先発で、後半は存在感が薄れてもいた。
無論、チェルシーで物を言うのは、絶対的なアブラモビッチの意見のみ。だが、世界制覇の野望を掲げてクラブを買収したロシア人オーナーは、「世界一」の肩書を欲していたと言われ、優勝を逃せば今季2度目の監督交代との説は、ベニテスの就任直後から、クラブの地元、西ロンドン界隈で噂されている。