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今季最多の7大会優勝。
地味でも凄い「小さな野獣」。
~テニス界の名脇役フェレール~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2012/12/18 06:00

今季最多の7大会優勝。地味でも凄い「小さな野獣」。~テニス界の名脇役フェレール~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

四大大会ではベスト4が過去最高。攻撃的なテニスも「ビッグ4」の前では苦杯を喫する。

 今季、男子ツアーで最多の7大会に優勝した選手をご存じだろうか。最終ランク1位が確定しているジョコビッチでもなければ、シーズン終盤まで1位だったフェデラーでもない。5位のダビド・フェレールだ。

 彼が今季最も活躍した選手の一人であることを知っているのは、よほどのテニス通だろう。30歳のフェレールは、過去2年間のほとんどを世界ランク5位か6位で過ごした。生まれてきた時代が悪かったというべきなのか、フェデラーに通算0勝14敗など、「ビッグ4」には頭を押さえつけられてきた。今季の四大大会も、全仏の準決勝ではナダルに、全米の準決勝ではジョコビッチに敗れ、決勝進出を逃している。7度の優勝も、ビッグ4との直接対戦はない。活躍の割に存在感が薄いのは、そのせいだろう。

 地元のバレンシアでもスーパースターとして遇されているわけではないようだ。13歳まで日本に暮らし、今はスペイン在住、フェレールと同じアカデミーで腕を磨く19歳、ダニエル太郎はこう証言する。

「ナダルとかと違って、彼が姿を見せても『わ、フェレールだ!』という感じにはならないですね」

朴訥とした男がコートで見せる、ツアー屈指の闘争心としぶとさ。

 サインを頼めば小さな字でちんまりと書き、英語の会見では小声でぼそぼそ話す。しかし、そんな地味な男はコートで豹変する。昨年の楽天オープン1回戦では、最初のポイントから錦織圭に襲いかかり、地元の大会で緊張していた錦織はたちまち飲み込まれて立て直せなかった。異名は「小さな野獣」。175cmの小兵ながら、噛みつきそうな勢いで相手に向かう姿からの連想だろう。似たような体格の錦織は、彼を「理想型」と称え、ダニエルも「練習に取り組むインテンシティ(熱心さ)がすごい」と、その背中を追いかけている。

 過去1年間(52週)のスタッツが素晴らしい。最終セットにもつれた試合の勝率94%はツアー1位だ。今季も14勝1敗である。第1セットを奪った試合の68勝3敗はツアー3位の成績。竹内映二デビスカップ日本代表前監督が言うように「最初のゲームからトップギアで戦える」選手であり、なおかつ、しぶとさもツアー屈指。まさに通好みの渋い選手だ。

 来季は、ビッグ4に食らいつき、その足元を揺るがす場面を見てみたい。

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