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GPファイナルの男子は日本の独壇場。
“先駆者”高橋大輔の危機感と自信。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byYUTAKA/AFLO

posted2012/12/03 10:31

GPファイナルの男子は日本の独壇場。“先駆者”高橋大輔の危機感と自信。<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO

NHK杯のSPで、シーズンベストを出した高橋大輔。フリーの後、「(今の出来は)50%くらい。欲張れば30%くらい」と今後への意欲を見せた。

日本男子の可能性を切り拓いてきた高橋の多大なる功績。

 ただ、高橋が追いかけてきたときと少し異なるのは、彼が切り拓いてきた場所の大きさだ。

 グランプリシリーズで優勝を含め何度も表彰台に上り、世界選手権で優勝し、ついにはバンクーバー五輪で日本男子初の銅メダルを獲得した。

 類まれな、彼ならではの観客を引き込む力とともに、日本男子がどこまで到達できるのか、ひとつひとつ形にして見せてきたのが高橋である。

 その活躍に、他の選手も大いに刺激を受けてきた。

「高橋選手に負けまいとやってきて、ここまで来ることができたと思います」

 と、以前、織田が語ったことがある。

「バンクーバーで銅メダルを見せてもらって、『次は僕も』と思いました」

 とは、小塚の言葉だ。五輪の次のシーズンの小塚の大活躍は記憶に新しい。

 日本男子の今日を生み出した理由はいくつもあるだろう。そのひとつに、まぎれもなく、高橋大輔というフィギュアスケーターの存在がある。

 NHK杯で優勝は果たせなかったものの、変わることなく、観客を引き込む力を見せる姿、若手の活躍について尋ねられる様を見て、なぜだか、ふと、その存在の大きさをあらためて思い起こさせられることになった。

高橋が思い描く理想の演技はソチ五輪で完成する!

 若手の成長でシビアな状況にあるのはたしかかもしれない。ただ、高橋が見据えるのはソチ五輪である。今はあくまでも過程にすぎないし、今年、コーチとしてモロゾフを再びチームに迎え入れたばかりだ。思い描いている演技がほんとうに完成されてくるのは来シーズンになるのかもしれない。

 危機感を示しつつ、どこか、そればかりではないニュアンスも高橋の言葉は感じさせた。

「一フィギュアスケーターとしては(日本男子の活躍は)きつい。でもレベルが上がっていることがうれしいですね」

 さらにこう口にした。

「ソチ五輪のとき、どこまで成長しているかを楽しみにやっています」

 シビアな状況の中にあって、あくまでも自分の成長を信じている。

 12月6日に開幕するグランプリファイナル、そして全日本選手権。

 来シーズンの最終目標、ソチ五輪へ向けて、ひとつひとつの過程を、高橋は進んでいく。

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