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“野良犬”小林聡が挑む、
「映画」という第2の青春。
~元キックボクサーが企画、出演~ 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph by2012映画『名無しの十字架』パートナーズ

posted2012/11/30 06:00

“野良犬”小林聡が挑む、「映画」という第2の青春。~元キックボクサーが企画、出演~<Number Web> photograph by 2012映画『名無しの十字架』パートナーズ

“野良犬”小林聡をご存じか。K-1全盛時にK-1に背中を向け、ヒジ・ヒザありのムエタイルールにこだわり続けた、記憶に残るキックボクサーだ。現役引退後はキック団体のゼネラルマネージャーを務め、噺家もやっていた。最近は高校やプロレス道場でキックを教える傍ら、俳優としても活動している。

 そんな小林が新たな挑戦に打って出た。12月上旬に公開される映画『名無しの十字架』の企画を手がけたのだ。それだけではない。キャストとしても名を連ね、虎と闘うことで名前も記憶も失ったキックボクサー・新崎真太郎を演じている。

 現在40歳の小林は『あしたのジョー』など梶原一騎原作の劇画が大好きな世代だ。ゆえに異種格闘技が話の肝である郷一郎氏の原作には感銘を受けた。それでも、なぜキックボクサーを主役に選んだのかという小林からの問いかけに対する郷氏の答えには驚かざるを得なかった。

「ハードな練習をしているスポーツの中では一番報われていないと思ったから」

 それは、現役時代の小林がいつも感じていながら口にできなかったことだった。

元選手にしかわからない悲哀があるから、自ら企画し、演じる。

「元キックボクサーの中には恵まれていない第二の人生を送っている人も少なくない。でも、俺は違うぞという思いを以前から強く持っていたんですよ」

 現役引退後にジムを運営したり、プロモーターに収まるキックボクサーはほんの一握り。大半の選手は現役時代を“青春の思い出”として心の奥底にしまい込まなければならない。愛があるからこそあえていいたいが、キックほど試合で得られる充実感とは裏腹に金銭的な見返りが少なく、プロとしてのステータス向上が難しいスポーツはない。

 だからこそ、小林はこの作品に出会った時に自ら企画を手がけ、元選手にしかわからない悲哀を演じてみたかったのだろう。とはいえ、一本の映画を制作するためには莫大な金が動く。生半可な気持ちでは、とても作品化までには至らない。案の定、苦労は絶えなかったが、途中で諦めるわけにはいかなかった。

「この歳で何か新しいことをやろうとしたらパワーもモチベーションも若い時以上に必要になってくるじゃないですか。もう一度青春を送るのは大変ですよ」

 舞台は代わっても、小林は世間と闘うという十字架を背負い続けている。

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