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W杯をめぐるもうひとつの戦い。
2022年招致を目指す日本の勝機は? 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2010/06/19 18:00

W杯をめぐるもうひとつの戦い。2022年招致を目指す日本の勝機は?<Number Web> photograph by Getty Images

他国をうならせた米国のプレゼン内容とは。

 ここで特筆すべきプレゼン内容を見せたのが米国だ。犬飼基昭会長が最大のライバルになると見ていたこの国が前面に打ち出した「米国内でのサッカーマーケット拡大の可能性」は、他国をうならせるものだった。

 丸山本部長は言う。

「プレゼンを見て感じたのは、どの国にも開催する情熱も資格もあるということ。その中で、米国が打ち出したマーケティングという切り口は、ぜひ日本も参考にしていかなければならない」

 そう感じるのにはもちろん理由がある。丸山本部長は「アフリカの次は南米でやることが決まっており、この2大陸は開催することに意義があった。だが、'18年は欧州で開催する見込みとなったことで、それ以降しばらくの期間は、サッカーマーケットを再構築するタームとなるのではないか」と読んでいるのだ。

 五輪やワールドカップの招致は、投票権のある理事たちの思惑が複雑に入り組んでいるため、票読みが極めて難しい。例えば、'16年の五輪招致では、本命視されていたシカゴが、切り札と言われたオバマ大統領を担ぎ出したにもかかわらず1回目の投票で落選するという、予想外のことが起きている。日本が現段階でどの位置におり、どのような票集めが有効なのか、残念ながら明確な答えはない。

7月に来日するFIFA視察団には日本の安全面を。

 ヨハネスブルクではプレゼンの2日後の6月10日にも、FIFA総会の会場で9カ国がブースを出してアピール合戦を繰り広げた。ここで人気だったのが、日本が用意したハッピだった。招致アンバサダーのジーコがハッピを着ている姿は特に注目され、用意した1000枚がすべてなくなった。イングランドのゲストとして来場していたボビー・チャールトンも日本のブースに来てハッピを着て記念撮影していったそうだ。こういった素朴なものが意外に受けるというのも面白い。

 今後の動きとしては、7月19日から22日までの4日間、FIFAインスペクション団が東京や大阪を視察する予定になっている。短い日程の中で、日本が伝えたいことをいかに視察団メンバーに伝えられるか。

 現在、ワールドカップが行なわれている南アは、大会前から不安視されていた治安面が劇的に良くなっているとは言えない状況だ。「安全に楽しめることが、どれだけ素晴らしいことか。思えば'02年の日本、'06年のドイツは良かった」とは、多くの人々の偽らざる本音。視察の際に、日本の安全面をさりげなく強調するのもいいのではないだろうか。

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