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民間発の新たなセリ形式。
売買ルートがさらに多彩に。
~活況を呈した繁殖馬セール~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/11/18 08:00

民間発の新たなセリ形式。売買ルートがさらに多彩に。~活況を呈した繁殖馬セール~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

クラレントは富士Sで久々の重賞勝利。由緒あるオーナーブリーダーの最期に華を添えた。

 競走馬を生産する農家のための事業を展開する商社は日本にもいくつかあるが、法律のしばりや組合との共存問題もあるようで、アグレッシブな提案といったものには滅多にお目にかかることができない。そんななかで、ジェイエス(本社は北海道新ひだか町)が開催している繁殖馬セールは、民間主催のセリ市としては珍しくいい形で定着した好企画と言える。

「現役を引退した牝馬(特に、故障等で出走機会がなかった馬)の売買の場を提供する」ことが当初の狙いだったそうだが、現在セリに上がる馬の主流を占めているのはすでに繁殖牝馬として働いている受胎馬たちだ。わずか数カ月後にはお腹の中にいる子馬の権利も手に入るとあって、セールには牧場関係者だけでなく、有力な馬主も多く集まる。この市場で取引された繁殖牝馬から数多くの重賞勝ち馬が輩出されている実績が、セリの信用となっているのだ。

 それにしても、10月24日に新ひだか町静内の北海道市場で開催された今年の秋季セールは格別な盛り上がりだった。185頭が上場されて、137頭が売却成立。その総額、6億9081万6000円(税込)は断トツの最高記録更新だ。

名門牧場の閉店セールも相まって、上場馬すべてが高価格で売却。

 大きな要因は、オーナーブリーダーとして長く日本の競馬の歴史に名を刻んできたエクセルマネジメント(旧えりも牧場)が、このセリを閉店セールとして、温めてきた良血馬を全て放出したことにある。目玉商品は、その前週に富士Sを勝ったクラレント(牡3歳、栗東・橋口弘次郎厩舎)の母であり、同じく重賞馬であるリディルも産んでいるエリモピクシー(牝14歳)。この馬がディープインパクトの仔を受胎しており、生まれてくる子が高評価を受けるのは確実とあって、価格は市場記録を大幅に更新する9975万円まで沸騰した。閉店セールを公言した甲斐があったようで、そのほかの上場馬もすべて想定より高い値段での売却となった。

 新しい試みとして、繁殖セール後に行なわれた同牧場のプライベートセール(1歳馬と当歳馬を8頭上場)も全馬が完売という成果をあげた。名門牧場がまたひとつ消えてしまうのは寂しい限りだが、馬を売買する新しい方法が提案されたのは非常に大事なことであろう。

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