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ハーデン電撃移籍で見えた、
前に進むサンダーの姿勢。
~有望株を放出したNBA優勝候補~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2012/11/09 06:00

攻守に弱点のない万能型のハーデンは昨季、平均16.8得点を記録して6thマン賞を受賞した。

攻守に弱点のない万能型のハーデンは昨季、平均16.8得点を記録して6thマン賞を受賞した。

 チームは生き物だ。開幕3日前、オクラホマシティ・サンダーがジェイムス・ハーデンをトレードで出したというニュースに、改めて思い知らされた。

 サンダーは、まるで教則本通りに作られたかのようなチームだった。ドラフトでチームの核となる選手たちを獲得し、最初は苦戦しながらも、若手の成長とともにチームも前進してきた。強豪として頭角を現した昨シーズンは、NBAファイナルに進出。ファイナルではマイアミ・ヒートに敗れて優勝は逃したものの、それも貴重な経験と見られていた。

 ハーデンはそんなサンダーの中心選手の一人。3年前にプロ入りした23歳で、控えながらも攻守に秀で、勝負強さも持っている。サンダーでの実績が認められ、今夏にはチームメイトのデュラント、ウェストブルックと共にロンドン五輪のアメリカ代表にも選ばれた。

 20代前半の米代表3人が牽引するサンダーは、今季の優勝候補だった。昨ファイナルの最終戦、勝敗が決し、ベンチに下がった3人がコートサイドで肩を組み試合を見つめていた姿は、チームの明るい未来を予感させるものだった。

契約延長交渉の“ビジネス”の中に見えた、生き物としてのチーム。

 しかし優勝を経験する前に、いや、それどころかその後、再び3人そろってサンダーとして公式戦を戦うことがないままに、ハーデンはトレードされた。理由は契約延長交渉の難航。チームもハーデンも、お互いに契約の意思がありながら、金額面の溝を埋めることができなかった。サンダーのプレスティGMは、これ以上ハーデンが譲歩しないと判断すると、すばやく切り替え、長期的なチームの成功を優先してヒューストン・ロケッツとのトレードをまとめた。

 トレード後、ハーデンは「結局、ビジネスなんだ」と、交渉が決裂したときのお決まりのセリフを言った。確かに金銭面で折り合わなかったのは“ビジネス”かもしれない。しかし、それ以上にチームは生き物なのだ。多くの人の思惑が絡みあい、チームを思わぬ方向に動かす。現実の世界に、教則本通りはありえない。

 それをわかってか、プレスティは言う。

「何か変化があったとき、入れ替えて元通りにしようとすることがある。でも、私たちは前とは違うのだ。次にどうなるかは、まだわからない。少し、このまま様子を見る必要がある」

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