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日本代表「新守護神」へ。
涌井秀章にかかる期待。
~「やらされた抑え」からの脱皮~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/11/07 06:00

涌井(左)を守護神に転向させた渡辺監督は「責任感が増した」と愛弟子の成長を喜んだ。

涌井(左)を守護神に転向させた渡辺監督は「責任感が増した」と愛弟子の成長を喜んだ。

「短期決戦で悔いだけは残したくなかった」

 ペナントレースを2位通過した西武・渡辺久信監督の思いは、CSファーストステージで、早めの継投になって表れた。ソフトバンクと1勝1敗で迎えた第3戦。2点ビハインドで迎えた9回のマウンドに守護神・涌井秀章を送った。センター秋山翔吾の連続好捕に助けられ、最後はスライダーで今宮健太を二塁フライに打ち取るも、試合には敗れた。今季の涌井の成績は1勝5敗30セーブ。セーブ王争いでは武田久に及ばなかったが、クローザーとしての役割をしっかり果たした。

 昨年、9勝12敗と苦しいシーズンを送った涌井は今季に懸けていた。ところが開幕投手を務めたものの3連敗を喫し、早々と二軍落ち。さらにその後、女性とのトラブルを週刊誌に報じられ、球団から無期限の謹慎を命じられた。6月に謹慎処分が解け、抑えとして戦列に復帰した時のことを涌井はこう振り返っていた。

「やらされた抑えかもしれないけれど、やらないと生き抜けないと考えたほど、追い詰められていた」

責任感を増した涌井に、東尾修も日本代表への推薦を明言。

 速球で三振を積み重ねるタイプではないからこそ、“自分は本当に抑え向きなのか”と悩んだ時期もあった。このとき渡辺監督は「9回の頭から行かすのだから、考え方はスターターと一緒だぞ」と涌井に伝えたという。クローザーとしてCS進出に貢献し、「自分の数字だけにこだわるより、チームの勝利のために投げる面白みも少しは分かった」と語った涌井。それでもライバル・ダルビッシュ有のメジャーでの活躍を見て、先発へのこだわりを捨てきれずにいた。

 CSの最中、WBC日本代表の投手コーチに就任した東尾修は、渡辺監督に「涌井はどこも悪くないのか」と訊ねた。師弟関係にある2人に隠し事はない。渡辺は「心配しなくて大丈夫です」と答えている。それを聞いた東尾は「今、代表を選ぶとして、抑えの候補があがってこない。日本は投手力で勝つしかないと考えたとき、故障さえなければ十分にあげられる名前だと思うよ」と期待を寄せる。

 紆余曲折の末の“抑え役”だったが、その実績で代表の可能性も出てきた。ダルビッシュとともに“国のために投げる”という喜びを感じたとき、もう“先発復帰”とは言い出さないかもしれない。

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