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ナビスコカップ決勝展望 経験の鹿島か、勢いの清水か 

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posted2012/10/30 22:33

 鹿島アントラーズと清水エスパルス。11月3日に迎えるナビスコカップ決勝戦はこの2チームが覇権を争う。リーグ戦では低迷を余儀なくされている鹿島だが、カップ戦では本来の強さを発揮してきた。対する清水は、シーズン中に選手を入れ替えながらチーム作りを推し進め、将来性豊かな若手が中心となった勢いのあるチームである。対照的なチームが繰り広げる一発勝負。頂点に立つのはどちらか――。

 
 タイトルへの道程は一つではない。それゆえ、その道のりの正しさは、勝利という結果を得た者だけが示すことができる。

 ファイナルへ進んだのは鹿島アントラーズと清水エスパルスだが、この両者ほど対極にあるチームはないだろう。それは、リーグ戦における成績の対照性だけではない。チームの作り方がまったく異なる点においても、まったく異なるのだ。

 かつて、昨季まで監督を務めていたオズワルド・オリヴェイラは鹿島アントラーズを次のように評したことがある。

 「このチームは、誰が監督をしてもある程度成功できる土台がしっかりできている。いままでのクラブのなかで、鹿島ほど仕事のしやすいクラブはない。ただ、プライドが高すぎると、ここで仕事をするのは難しいかもしれない」

 その意味するところは明白だ。国内3大タイトルを合計15回も制してきた名門クラブが安定してタイトルを獲得してきた裏には、数多くの選手から「誰が出ても鹿島は鹿島」と言われるとおり、確固たる哲学に基づいたチーム作りが存在してきた。前監督でもあるオリヴェイラ氏の言葉は、鹿島というクラブの有り様を的確に表現したものだった。

 その姿勢はジョルジーニョが監督に就任しても変わらない。現役時代、鹿島の哲学の実践者だったジョルジーニョ監督も、システムに合う選手を望むのではなく、いまいる選手たちに鹿島の選手らしくあることを強く求めたのだった。

 その対極にあるのが、アフシン・ゴドビ監督が率いる清水だ。チームの顔とも言える主力選手を次々と放出。そのうちの一人で鹿島に加入した本田拓也が「知らない人ばかり」と話すほど、この2年で選手の顔ぶれは一気に様変わりした。

 しかし、戦力低下の予想を覆し、08年以来となるファイナル進出を果たした。しかも、今季シーズン途中に、岩下敬輔(ガンバ大阪)、枝村匠馬(セレッソ大阪)、小野伸二(ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ/豪州)、アレックス(アルアイン/UAE)らがチームを離れたにもかかわらず、である。

 その代わりに出場機会を得た若くて才能のある選手たちが、続々と頭角を表し、躍動している。就任から2年でゴドビ監督の戦い方が浸透し、チームの基盤ができつつあるからだろう。シーズン途中から加入したばかりの金賢聖(キムヒョンソン)や特別指定選手の筑波大の瀬沼優司が、センターフォワードの位置で存在感を発揮しているのは、その最たる例だ。クラブの色が出始めたというよりは、ゴドビ監督のサッカーを忠実に表現できる選手がそろったことが、結果に反映され始めている。

 このまったく違うチーム作りを進めてきた両チームが、ともにファイナルに進んできたことは興味深い。他に類を見ない確かな哲学でファイナルまで勝ち進んできた鹿島と、監督を中心に若くて勢いのある戦いでタイトル目前まで上りつめてきた清水。

 勝者はどちらか片方のみである。(鹿島担当記者・田中 滋)

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