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<走ることを、記録する意味とは?> 糸井重里 「手帳をつけることは未来の自分との共同作業だよ」 

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柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/10/18 06:00

<走ることを、記録する意味とは?> 糸井重里 「手帳をつけることは未来の自分との共同作業だよ」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

記録して覚えると、必ず人生のどこかで力を発揮する。

――たしかに最近は仕事のために身体作りをするビジネスマンが増えてきて、マラソンやトライアスロンをやる経営者なんかの話もよく聞きますよね。

「身体の能力って、アウトプットし続けないと伸びないでしょう。今日も明日も走る人が伸びるのであって、毎日『走るとは何か?』を考えていても何も変わらない。『やることでしか変わらないこと』って、仕事の当事者意識を引き出すのにも都合がいいんだと思います。だから、アメリカのビジネスマンはよくエクササイズをするし、効果を実感するから人にもすすめたくなるんでしょうね。スポーツでも仕事でも、たくさん量をやることでしか分からないことってありますけど、ただやるだけじゃなくて、ドキュメント、記録をちゃんとつけることも大事です。そうすると差異が分かりますから」

――差異というのは昨日と今日との違いであったり……。

「そういう小さいのもあるし、大きな波もありますよね。それは記録をつけていないとつかめないです。それが実感と重なってくるようになったら、自分がいま何をすべきかが分かってくる。そこで覚えた方法、体感したことって、必ず人生のどこかで力を発揮すると思います。長い時間がかかるし、大変な努力ですけど、そうやって運動を続けている人に僕は敬意を払います」

ものごとの関係性を分かっている代表的な人は、為末大さん。

――ドキュメントのつけ方にコツのようなものってありますか?

「何が起こったのかをまず自分で理解することですよね。そのためにはデータが必要です。ランナーだったら距離、タイム、心拍数などが数字で出るから分かりやすいんでしょうね。データというのは、ひとつだけだと意味を持っていないけれど、ふたつ以上のデータを比べられるようになると意味が出てくる。さらに折れ線グラフみたいなもので変化を把握できるようになると、いろいろなことが読み取れるようになってきます。そのうち、データにすべてを頼ることはできないんだよね、ということも分かってくる。ときには、病気や怪我で積み上げてきたものがパーになることもあるけど、それに対応するやり方を記録していくことで、また新しいことを学べる。

 頭がいい人というのは、そうやって自分とものごとの間にある関係性をたくさん分かっている人なんだと思います。知識をいくら持っていても、関連づけができないと意味がない。肉体を鍛える中で培った方法論を他のものごとに関連づけられるアスリートには脳のキレを感じますよね。たとえば、為末大さんはその代表例だと思います」

糸井さんが手帳について、もう一つのポイントとして挙げたのは、
その記録を読み返すタイミングについてだった。
そしてスマホなどが浸透する中で、手書きが持つ意味について
自らの経験を踏まえた思いを語り始め……。

つづきは、雑誌Number Do『秋のランニング特集 忙しい人ほどよく走る!~あの人はいつどうやって走っているのか?~』。もしくはNumberモバイルにて
お読みください。

『Number Do』と『ほぼ日』がまさかのコラボ 糸井重里氏が主宰するウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』。
今回、超文化系の『ほぼ日』と、一応体育会系の『Number Do』が
まさかのコラボレーションを果たし、書いて楽しいランナー手帳が
完成しました。雑誌Number Do『秋のランニング特集』号の特別付録となっています。

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