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“試合前握手事件”でプレミアが紛糾!
正しいスポーツマンシップを再考する。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byMan Utd via Getty Images

posted2012/10/13 08:01

“試合前握手事件”でプレミアが紛糾!正しいスポーツマンシップを再考する。<Number Web> photograph by Man Utd via Getty Images

9月23日、アンフィールドでのプレミアリーグ、リバプール対マンチェスター・ユナイテッド戦の試合前。スアレスと目を合わさずに握手を交わすエブラ。ラファエウと香川も心配そうに様子を見つめていた。

エブラとスアレスの“今季初対決”では握手が成立。

 9月23日の今季初対決でも、試合前の儀式におけるエブラとスアレスが注目された。結果は握手が成立。しかしながら今回の対戦には、その前々週、23年前にリバプールを襲った「ヒルズボロの悲劇(スタジアムで多数のサポーターが亡くなった群集事故)」の真実が明らかになり、犠牲者の遺族に弔意を示すという特別な動機があったことも事実だ。

 スアレスに対しては、キャプテンのスティーブン・ジェラードが、「過去を水に流して握手すべき」と、メディアを通じて訴えていた。エブラは、「表敬が最も重要な一戦で、スアレスと握手しないわけにはいかなかった」と語っている。別のタイミングであれば、両者は再び「事件」の当事者となっていたかもしれない。

不倫疑惑に人種差別……握手を拒まれるテリーの側に否がある!?

 前述のテリーは、不倫疑惑が浮上した2年前にも「事件」の当事者となっている。

 元交際相手に手を出されたウェイン・ブリッジ(現ブライントン)に、握手を拒否されたのだ。通常、握手が行われるキックオフ数分前は、中継局がCMを流す時間帯だが、この一戦では生中継が続行された。翌日には、ボディランゲージの専門家による、テリーの心理分析を掲載する国内紙まで現れるほどの注目度となった。その後、2部リーグ勢を含むレンタル移籍を繰り返しているブリッジが、再び先発メンバーとしてチェルシー戦に臨む日が訪れれば、スキャンダルを求めるメディアは「事件」再発の可能性を煽るに違いない。

 また、握手の拒否は当事者間のみとは限らない。

 例えば、今季からQPRでキャプテンを務めるパク・チソンは、先のチェルシー戦でテリーとの握手を拒んでいる。昨季までマンUに所属していたパクには、実弟への人種差別行為でテリーとの間に亀裂が生じたリオ・ファーディナンドの元チームメイトとしての立場もあるのだ。昨季後半の対戦では、両軍握手が決行されれば、QPRの全員がテリーとの握手を拒否する意向だったと言われている。現実となっていれば、過去最悪の「ハンドシェイク・ゲート事件」が発生しているところだった。

試合前の握手の儀礼に違和感を感じるとの声も……。

 握手の儀礼を歓迎する選手がいないわけではない。

 ショーン・ライト・フィリップスが、その1人だ。QPRの選手としてチェルシー時代の同僚であるテリーの手を握った後で、「自分にとっては何の問題もないし、特に子供たちに対して、サッカーの健全なイメージをアピールできるから大歓迎さ」と言っている。

 もっとも筆者は、チェルシーとQPRでプレーした選手としてライト・フィリップスの先輩に当たるレイ・ウィルキンスの見解に賛成だ。

 現在は解説者のウィルキンスは、両軍の今季初対決を前にラジオのインタビューで言っていた。

「これから戦う相手と握手を交わす慣習には、以前から違和感を覚えていた。正々堂々と戦った後、自らの意志で互いに握手を求めればいい」

【次ページ】 握手以上に意味を持つ、試合中のジェントルなふるまい。

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