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阪神とオリックスは宿命の対決づくし。
鶴直人vs.T-岡田がもっと見たい!! 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/06/07 12:40

阪神とオリックスは宿命の対決づくし。鶴直人vs.T-岡田がもっと見たい!!<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

「松坂さんのように感動させられるようなピッチャーに」

 高校3年夏前の練習試合で、右ひじに肉離れを起こしてしまい、最後の夏は完全燃焼できなかったが、そのポテンシャルを買われて、鶴は阪神に1位指名された。プロに臨むに当たって、鶴はこう誓っていた。

「三振にはこだわりません。いかに投球数が少ない中で打ち取っていけるか。三振は大事な時に取れればいい。ローテーションのピッチャーはやっぱり、そういう投手なのかなって思っています。自分は野球をやる上での目標は松坂さん。松坂さんに感動させられたので、僕も、人を感動させられるようなピッチャーになりたい」

 そんな鶴がプロ入り5年目、紆余曲折があったにせよ今季は一軍で先発を任されるようになったのだ。交流戦前の広島戦で、前田健太との先輩・後輩対決を経て、5月29日の日ハム戦では球界のエース・ダルビッシュに投げ勝った。

 課題がまだまだ残る投手だが、後輩との対決やダルビッシュと投げ合うなど、今季の彼には運命的ともいえる非常に興味深い対決が続いていたのだ。まるで、野球の神様が彼に試練を与えているかのように……。

指揮官同士の因縁で阪神vs.オリックスはヒートアップ!

 そんな中で、オリックスとの対決を迎えていた。

 今年の阪神vs.オリックスは例年以上に、注目された対戦だった。

 阪神の前監督が古巣と対決するという構図は、指揮官同士が意識しないと宣言しても、ファンとしては自然に力が入ってしまうものだ。いわば、今年の「関西ダービー」は、そうした意味で、ちょっとした注目を浴びていた。その中に、鶴vs.T-岡田の対決が重なったのだ。対決前日には、彼らの因縁を取り上げる関西メディアも多かった。

 試合開始から、相手を意識していたのは鶴の方だった。第1打席はT-岡田の選球眼がまさったが、第2打席では鶴のストレートが指に引っかかり、2打席連続四球。「投げにくそうにしているなとは感じました。僕に威圧感があったとかは、それはないと思いますけど」とはT-岡田である。

 そうした空気を感じたからだろう。阪神ベンチは5回表の例の場面で、鶴の降板を指示したのだ。

【次ページ】 鶴とT-岡田の対決で見えてくる両チームの育成事情。

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