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三振記録で夏を沸かせた、
桐光学園・松井の凄み。
~魔球スライダーと巧みな投球術~ 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2012/09/02 08:00

松井が記録した68奪三振は歴代3位、1回戦で見せた10者連続三振は史上初の快挙だった。

松井が記録した68奪三振は歴代3位、1回戦で見せた10者連続三振は史上初の快挙だった。

 高校野球史上初めて球速160kmの壁を超えた大谷翔平(花巻東)が岩手大会決勝で敗れ、マスコミは軽いショック状態に陥った。

 万全の体調で臨む甲子園大会で150km台の快速球を連発し、大谷見たさの観客が甲子園球場に押し寄せる――そんな夢想をマスコミだけではなく、多くの関係者が抱いていたが、叶わなかったのだ。

 そうした主役不在の喪失感を救ったのが、大会奪三振記録を塗り替えた2年生左腕、松井裕樹(桐光学園)である。1回戦の今治西戦でそれまでの大会記録19奪三振を大きく上回る22奪三振を記録して松井は一躍、甲子園の寵児となった。

 その最大の武器は、縦に大きく割れるスライダーだ。今治西戦で驚いたのは、左打者の伊藤優作が大きなアクションでよけたスライダーが「ストライク!」とジャッジされたシーン。まるで漫画『ドカベン』の世界じゃないかと思った。

 このスライダーを最速145kmのストレートのときと同様、体全体を使った迫力あるフォームで投げ込んでくる。ストレートを想定して打席に立った打者は、このスライダーを絶対に打てない。

 2回戦では好打者を揃えた常総学院から19個の三振を奪い、2試合通算41奪三振を記録した。これは54年間破られなかった板東英二(徳島商)の記録を1つ上回るアンタッチャブルレコードだ。

浦添商戦の序盤は三振狙いを封印しても、終わってみれば12K。

 3回戦で対戦した浦添商は、ミート打法に徹するためノーステップで打つ姿勢を見せるなど万全の対策を立てて臨んだが、松井は三振狙いを封印し、打たせて取る配球に徹した。3回2アウト(打者11人)まで三振ゼロだったことが、松井の狙いを証明している。それでも終わってみれば12個の三振を奪っているのが凄い。狙って三振を取る術を心得ているとしか言いようがない。

 準々決勝の光星学院戦では、今年の高校野球界を代表する強打者、田村龍弘、北條史也に連続タイムリーを打たれ、松井の甲子園は終わった。

「1人で投げ切れるようになって戻ってきたい」――泣き腫らした目の松井が、試合後に語った言葉である。

 2年生の松井には来年春、夏、再び甲子園に戻ってくる可能性がある。ファンはもちろん、同世代の強打者も手ぐすね引いて、松井の再訪を待ち望んでいる。

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