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ファーガソンが目論む戦術革命。
香川真司を軸にマンUが変貌する!?  

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byAFLO

posted2012/08/27 18:45

初ゴール後の記者会見で、これからの課題を問われた香川。「もっと中央でボールを受けられるようにしたい。(中略)(プレミアでの活躍は)絶対にできる、という自信がある」

初ゴール後の記者会見で、これからの課題を問われた香川。「もっと中央でボールを受けられるようにしたい。(中略)(プレミアでの活躍は)絶対にできる、という自信がある」

「昔はイングランドの人間が世界にサッカーを教えたと自慢していたのに、今はどうやら日本人にサッカーを習う時代になったみたいだ。マサ、あのカガワっていう選手は大したもんだよ」

 オールド・トラッフォードのプレスラウンジで、2日ぶりにまともな食事にありついていると、後方から突然声をかけられた。香川真司の活躍に気をよくしているサポーターが、この手の話をしてくるのならばわかる。だが声の主は昔からつきあいのある知人、しかもFWA(サッカー記者協会)で会長をつとめてきたジャーナリストである。

 しかも僕が話しかけられたのは土曜の午後2時。香川がフルハム戦で歴史的な初ゴールを決め、万雷の拍手を浴びる前だった。つまり現地イギリスの事情通の目から見れば、SHINJI KAGAWAはプレミアでわずか一試合をこなしただけの時点で、既にマンUに大きな影響を及ぼしつつあったということになる。

ファーガソンが抱き続けてきた「4-4-2」への愛情。

 香川がもたらしつつある影響とは何か。

 それは簡単に言えば、近年のマンUに欠けていたオプションと、新しい攻撃のコンセプトということになる。

 もともとアレックス・ファーガソン監督は、スコットランドで監督を始めた頃から4-4-2を好んで使ってきた。中盤の底に2枚のボランチを置き、両ワイドには足の速いウイングを配置、そして決定力のあるFWに最前線でコンビを組ませる。ファーガソンは常に戦術をアップデートし続ける「柔らか頭」の持ち主として知られているが、根底では4-4-2への愛情をずっと抱き続けてきた。

カントナとロナウドは、マンUに戦術的な革命をもたらした。

 その意味でマンUの戦術に革命的な影響を与えたのが、'92-'93シーズンのエリック・カントナと、’06-'07シーズン以降のクリスティアーノ・ロナウドである。

 カントナは従来イングランドサッカーには存在しなかった「10番」の有難味――ディフェンダーとミッドフィルダーの間に空いているスペースを活用する方法がいかに有効かを教えながら、マンUに26年ぶりとなる国内リーグのタイトルをもたらした。

 他方、ロナウドはルーニーやサア、後にはテベス等と組みながら「ゼロトップ」でコレクティブカウンターを仕掛けていくオプションをファーガソンに与えた。これは翌'07-'08シーズンに約10年ぶりとなるCL制覇という形で結実する。

 ところがロナウドをレアルに放出した後のマンUでは、戦術の革命が起きてこなかった。

 むしろ昨シーズン見られたようにベーシックな4-4-2への原点回帰の傾向が強くなり、ファーガソンは他のチームと差別化を図るための攻撃のオプションを確保するのに苦労するようになった。

<次ページへ続く>

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