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<ナンバーW杯傑作選/'10年1月掲載> 名将ヒディンクに学べ 「オランダの倒し方、教えます」 

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サイモン・クーパー

サイモン・クーパーSimon Kuper

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posted2010/06/03 10:30

<ナンバーW杯傑作選/'10年1月掲載> 名将ヒディンクに学べ 「オランダの倒し方、教えます」<Number Web> photograph by Pics United

ロッベンの消耗を待て。スキルは高いが体力はない。

 ロッベンとファンデルファールトは、地球上で最も高いスキルを身につけている。とはいえ細身のロッベンも、ふっくらしたファンデルファールトもアスリートではない。

 およそロッベンは大会序盤では世界最高のプレーヤーだ。しかしながらユーロ'04でのチェコ戦、'06年ワールドカップのアルゼンチン戦、ユーロ'08のフランス戦が示すように、彼はトップクラスのゲームをつづけざまにこなす体力を持ち合わせていない。日本には大会2試合目のロッベンと対戦するという幸運がある。こんなことを言うのもなんだが、彼の足を蹴れば消耗も早められるだろう。

 またファンデルファールトに関しては、足の速いMFにマークさせ、長い距離を何度も走らせることが重要になる。そうすることでファンデルファールトも厭気がさすはずだ。

DFラインを上げ、FWとのスピード勝負に持ち込め。

 W杯ではファンペルシがCFでプレーするだろう。そうなったら要注意だが、現在のファンペルシは怪我が長引いているし、ファンマルバイクは彼を10番で使うかもしれない。その場合に日本に望みを与えるのは、CFがルート・ファンニステルローイかクラース・ヤン・フンテラールになることだ。

 もちろん両者はすばらしい得点能力をもっている。だが幸いなことに速さはない。かつてのファンニステルローイは完璧なストライカーだったが、1年間負傷に苦しんだし大会期間中に34歳になることを思えば、スピードは落ちているとみて間違いない。

 フンテラールがまだ26歳で、比較的コンスタントにゴールを挙げていたのにもかかわらずレアル・マドリーから放出されたのも、スピードがなかったからだ。

 ただしいずれが先発するにしても、日本は相手を「狩場」から遠ざけておかなくてはならない。ペナルティエリア内の強さは、経験の浅い日本のDFの比ではない。日本の守備陣はラインをゴールから30ないし40メートルに保って、フンテラールやファンニステルローイとの競走に持ち込むようにする。そうなったら、さすがのオランダ人も対抗できない。

 ヒディンクはW杯で監督をやらないと発言している。もし僕がJFAの人間だったら10万ドルくらい積んで、オランダに関する究極のレポートを書いてくれと頼むのだが。こんなオファーをする人はいないのだろうか。

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