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ロンドン五輪の“運営”を採点する。
東京招致活動の参考にすべき点は? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA

posted2012/08/14 11:40

ロンドン五輪の“運営”を採点する。東京招致活動の参考にすべき点は?<Number Web> photograph by Tetsuya Higashikawa/JMPA

閉会式では、再結成されたスパイスガールズに、ファットボーイ・スリム、ジョージ・マイケル、ケイト・モス、モンティ・パイソンのエリック・アイドル、クイーンのブライアン・メイらが登場し、ジョン・レノンのミュージック・ビデオが流された。

 スポーツとはほぼ無関係な、イギリスのポップカルチャーを詰め込んだ閉会式をもって、ロンドン・オリンピックは幕を閉じた。

 いい大会だった。なにより会場の雰囲気が素晴らしい。試合の展開に合わせ、拍手にため息、ブーイングに足踏みと観客があらゆる表現方法で試合に参加する。

 とにかく「スポーツ観戦力」が高い大会だった。

 もちろん、不必要なウェーブが起きたこともあった。女子サッカーの準決勝、日本対フランス戦。結構、イギリスの人も見にきていたから、極論をすれば試合結果に関しては第三者。前半は意味なくウェーブをしていたのだが、後半20分過ぎからフランスが怒濤の攻めを見せ、日本がしのぐ展開になるとウェーブがぴたりと止み、試合の流れとともに観客が呼吸をし始めた。素晴らしい雰囲気だった。

 2020年、東京にオリンピックがやってきたなら――同じような呼吸を身につけられるだろうか。ちょっと時間が足りない気もする。

 さて、ここでロンドン・オリンピックの運営面での評価をしておきたい。東京オリンピックの招致に向けての視点作りに役立つと思うからだ。

ロンドン・オリンピックの運営面、各ジャンルの評価は?

●オリンピック関連施設……評価A 

 個々の施設は素晴らしい。「オリンピック・スタジアム」はスタンドの傾斜が急で2階、3階からでも見やすい。

 オリンピック・パークには、この他にバスケットボール、競泳、水球、ホッケーの会場などが建設されており、徒歩で移動が可能だった。

 メイン会場からバスで30分ほどのところにある「エクセル」は、柔道、フェンシング、卓球、レスリングなどが行なわれた。この巨大展示場内は移動が容易で、男子フェンシングのフルーレ団体と、女子卓球の団体準決勝が重なったものの、真向かいの会場だったので、掛け持ちも可能になった。こうしたコンパクトな面は大いに評価できる。

 テニスはウィンブルドン、サッカーはウェンブリーで開催されたおかげで、ステータスがグンと上がった。

 特にテニスはこれまでのオリンピックとは違い、選手が「ウィンブルドンで恥ずかしい試合はできない」と思っているのがヒシヒシと伝わってきた。

 しかし、各会場が離れ過ぎていて、移動に手間がかかるのが難点。たとえば、体操会場のノースグリニッジからウィンブルドンまでは移動に1時間を必要とした。

 昨今のオリンピックは、計画段階でコンパクトであることが重視されるが、北京と比べると、移動の負担は1.5倍増しの印象。

 東京はロンドンをベースにして考えれば、評価の高いプランが作成できるのではないか。

【次ページ】 順調だったロンドンの交通対策は、東京の参考になる!?

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