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J2やJFLよりタイリーグに行くべき?
“微笑の国”の知られざる蹴球事情。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byAFLO

posted2012/08/15 10:30

J2やJFLよりタイリーグに行くべき?“微笑の国”の知られざる蹴球事情。<Number Web> photograph by AFLO

2007年、U-20日本代表のポルトガル遠征でカーボ・ベルデ代表と対戦した小澤竜己。当時の代表には香川真司や伊藤翔、梅崎司などもいた。

U-19代表などで活躍した小澤がタイに渡るまで。

 小澤は青森山田高校のエースストライカーとしてインターハイ優勝に貢献し、“調子乗り世代”と呼ばれたU-19日本代表の常連だった。

 FC東京ではなかなかチャンスを得られなかったものの、ガイナーレ鳥取でJ2に昇格するまでプレー、昨季はJFLのブラウブリッツ秋田に所属していた。そして鳥取時代の監督のヴィタヤ・ラオハクルからの誘いで、タイという未知の扉が開かれたのだった。

「実は最初はヴィタヤが率いるチョンブリーFCに入る予定だったんですが、現地まで行ったらその話がなくなった。まあタイは理不尽なことばかりなので、すぐに慣れましたが(笑)。それでチョンブリーの兄弟クラブであるパタヤに入ることになった。チョンブリー、パタヤ、シラチャは大ボスが同じで、その息子3人がそれぞれのクラブのオーナー。パタヤでのプレーが良かったら、チョンブリーに引き抜くという感じだったんだと思います」

 小澤はU-19ほか各年代別の日本代表でプレーしたタレントであり、まだ24歳と若い。十分に通用するはずだった。しかし、タイで待っていたのは、想像を越えた“競争”だった。

「今年、タイリーグには約50人の日本人選手がテストを受けに来たそうで、韓国からは約70人、アフリカからは約1000人が来たらしいです。物価が安いうえに、入団できればそこそこのお金をもらえる。だから限られた枠に、ものすごい人数が殺到するんですよ」

『3人+アジア枠1人』の狭き門に1000人以上の外国人が押し寄せる。

 タイのプレミアリーグの外国人枠は、去年までは『5人までが同時にピッチに立てて、2人がベンチ』というものだった。つまり計7人だ。それが今年からはACLのルールにならって『3人+アジア枠1人』と、一気に縮小された。そこに1000人以上の外国人が押し寄せるのだから、競争が激しくならないわけがない。

「センターバックとFWは、だいたいアフリカ系の選手が占めている。だから試合はすごく激しいですよ。個人で目立たなければ、評価されない。僕がいたパタヤには、スロバキア、ナイジェリア、カメルーン、韓国の選手がいました」

 すでに触れたとおり、こうやって外国人が集まるのは報酬がいいからだ。小澤によれば「物価が安いので、十分に貯金ができるレベル」だという。パタヤはリゾート地なので環境もいい。クラブの施設という点でも、タイの景気の良さを感じさせられることが多かった。

【次ページ】 タイリーグは入るのも、活躍するのも簡単じゃない。

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小澤竜己
パタヤ・ユナイテッド

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