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サッカー銅メダルを巡り日韓対決へ。
“絶対に負けられない”韓国側の事情。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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photograph byYonhap/AFLO

posted2012/08/09 13:35

サッカー銅メダルを巡り日韓対決へ。“絶対に負けられない”韓国側の事情。<Number Web> photograph by Yonhap/AFLO

ホン・ミョンボ監督と韓国の選手たち。ライバル日本との対戦、かつ兵役免除がかかる一戦であり、3位決定戦への思いは極めて強い。関塚ジャパンは、彼らの“覚悟”にひるまず戦うことができるか。

 強い言葉が、飛び交っている。

「あえて何かを言わなくても、どれだけ重要かは分かる。日本には勝ってきたし、負けてもきた。しかし今回の覚悟は特別だ」
(ク・ジャチョル/アウクスブルク=ドイツ)

「これまでのどんな試合よりも、強い精神力が必要となるゲーム」
(キ・ソンヨン/セルティック、スコットランド=いずれも、8日の準決勝後会場にて)

 熾烈さ、スリル、背負うものの大きさ。メダル、名誉、ライバル対決。日韓対決となった10日の男子サッカー3位決定戦は、オリンピックサッカー史上でも指折りの重みを持つゲームになる。

 ロンドンは、韓国スポーツ界にとって特別な地だ。1948年、前回のロンドン五輪に約70人の選手団を送り込んだ。KOREAとして、はじめて夏季五輪に参加。まだ正式な独立を果たしていない中、特例として参加を認められた。経費節減のために、船や電車を乗り継ぎ20日かけて現地に移動する時代だった。日本はドイツなどとともに、敗戦国として参加を許されなかった大会だ。

 それから、64年――。大会13日目を終えてのメダル獲得数は金12、銀7、銅6。金メダルの数では、中国、アメリカ、英国に次ぐ世界4位だ。そんななか、韓国最大の人気種目・サッカーも初のメダル獲得なるか。

「ライバル対決と、徴兵問題の両方がかかっている」(キ・ソンヨン)

 ……が、韓国選手としては、そんな話どころではないだろう。この試合は、ある意味キャリアの命運を握るとすらいえる重要な意味を含んでいる。

 勝利、すなわちメダルを獲得すれば、徴兵免除の恩恵が国家から施されるのだ。

 韓国では、この点からもオリンピックの注目度が高まっている。

 同国兵役法では、「オリンピックのメダル獲得、アジア大会優勝で徴兵免除」という規定がある。ごく簡単に言えば、国家の発展に寄与した、という解釈だ。

 各種目のトッププレーヤーたちは、通常なら約2年半の徴兵期間は「国軍体育部隊」に入隊しなければならない。そこで所属チームを離れて競技生活を続けることを余儀なくされる。しかし、免除となれば約2週間の基礎訓練を受ければ済む。セルティックでプレーするキ・ソンヨンも、10日の日韓戦に関して「ライバル対決と、徴兵問題の両方がかかっている点がプレッシャーなのは確か」と話す。

 逆に敗れれば、メダルも徴兵免除も手に出来ず、かつ宿敵に敗れ大会を去るというゲームなのだ。

【次ページ】 監督、スタッフ含め、韓国には多数の「J経験者」。

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