女王・コフリンも“屈辱”的な扱いを意に介せず。

　その後、100mバタフライと200m個人メドレーでは金メダルを獲得したものの、個人種目は金2、銀1、4位という結果で、4年前と比べれば成績を下げたが、彼の顔から笑みが消えることはなかった。

　同じく米国の競泳代表で、女子の100m背泳ぎと100m自由形ですでに金2、銅2のメダルを持っているナタリー・コフリンは、今回3度目のオリンピックで個人種目の代表にはなれず、400m自由形リレーのメンバーとして代表入りしていた。

　しかしロンドンでは、予選で泳いだだけで、決勝の時にはメンバーから外されてしまった。日本社会の常識から見れば、これほどの屈辱はないように思えるが、コフリンはコメントを求められると、拒否することもなく、皮肉を込めることもなく「コーチは素晴らしい決断をした」と、堂々と語っている。

3人の王者の、過去の栄光にとらわれない言動が残した印象。

　彼女は女子100m背泳ぎで、世界で初めて1分の壁を破った選手であり、2001年の福岡世界水泳で初めて金メダルを獲って以来、その選手生活は、数々の栄光に彩られてきた。そのような選手が、3度目のオリンピックに挑戦して、結果は出なくても、笑みを浮かべて会場を去る。何ひとつ、恥ずべきことなどないというその態度は、とても気持ちのいいものだった。

　北島29歳、フェルプス27歳、コフリン29歳。この3人は、過去の栄光にとらわれない、他人の評価に左右されない言動で、金メダル獲得とはまた違った、強い印象を残してくれたと言える。