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北京五輪が陸上短距離界に示した、
世界の舞台という「現実的目標」。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2010/05/26 10:30

北京五輪が陸上短距離界に示した、世界の舞台という「現実的目標」。<Number Web> photograph by AFLO

次々と日本新記録を更新している福島千里。北海道という冷涼な土地で育まれたその短距離の才能は、日本短距離陸上界全体を刺激している

短距離界にモチベーションを与えた北京五輪の銅メダル。

 このように活発な動きを見せる短距離だが、その理由は、どこにあるのか。

 短距離で思い出すのが、塚原も出場した北京五輪の陸上男子4×100mリレー決勝だ。短距離種目で、日本がオリンピック初のメダルとなる3位に入ったレースだ。

 陸上の短距離と言えば、末續慎吾の世界選手権200m銅メダルはあったものの、厚い壁に阻まれ、幾人もの選手が上位を目指してはね飛ばされる、そんな歴史が続いていた。リレーの銅メダルはようやく壁をこじ開けた瞬間だったのだ。

 たしかに強豪のアメリカやイギリスが予選で失格したという幸運はあったかもしれない。それでも日本が3位を引き寄せたのは、バトンの受け渡しの研究を重ねたことに象徴されるように、勝つための努力と執念があったからこそだ。

 快挙の余韻は、その後、日本陸上短距離界にも影響をおよぼした。結果を残したことが、「自分たちにもやれる」と実感を与えたのだ。

日本選手権は世界の扉を開けるための第一歩だ。

 そして、福島が北京五輪で、日本女子として56年ぶりの100m代表になり、前述のように昨年の世界選手権で2次予選進出を果たしたことも、同じ意味を持っている。

 6月4日からは、香川県丸亀市で日本選手権が行なわれる。

 短距離陣にとって、夢を現実のものとして手繰り寄せるために、また一歩踏み出す大会である。

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