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<ナンバーW杯傑作選/'06年7月掲載> 中村俊輔 「届かなかった思い」 ~日本のサッカーを追求した結論~ 

text by

藤沼正明

藤沼正明Masaaki Fujinuma

PROFILE

photograph byMasaki Fujioka(JMPA)/Naoya Sanuki(JMPA)

posted2010/05/26 10:30

 28度目の誕生日にドイツから帰国した中村は、そのまま1年ぶりの完全なオフに入った。関係者は「まずは、いったん頭を真っ白にしてくれたらいい」と話す。スコットランドのシーズン・インは早いが、そこまでのおよそ1カ月、予定はまだ白紙だという。

 いずれにせよ、ドイツでの3試合270分の意味を受け止め、整理する作業は、これからの話になる。それでも、「切り替えるということじゃなく、反省して次に進みたい」と話した中村は、ドイツで直面した現実を乗り越えていくつもりでいる。

 むろん、刻まれた傷は深い。

「ジーコの最後の大会でいいプレーができなかった……」

 その悔いは、きっと消えることはない。

 ドルトムントの敗北から数日後、ブラジル戦の映像に目を通してみた。テレビ画面に映る中村の動きも、スタジアムで目にしたときと変わらず、やはり好調時の切れは感じられなかった。スタミナの問題というより、あらゆる動作に緩急が欠けているように見えた。ケガ、発熱など、いくつかのアクシデントが群がりおこった数週間を経て、結果的に彼はベストのコンディションを整えるにはいたらなかった。

 もっとも、映像を通してコンディション以上に気になったのは、中村のプレーが周囲のリズムとずいぶん違っていることだった。試合に入りこめていないというよりも、まるで違うピッチでプレーしているかのような、違和感がつきまとっていた。

 とにかく、際立って横パス、バックパスが多いのである。判断の遅れや悪コンディションの影響もあっただろうが、「やむをえず」というより、もっと意図的なニュアンスを感じた。

攻撃に関する限り、中村は蚊帳の外にいた。

 対照的に、中田英寿、小笠原満男のふたりはつねに前、つねにタテを意識してプレーしていた。彼らの積極性は、フレッシュな2トップの活発なランニングとマッチして、前半に何度かのチャンスを生み出している。結果的に中村のプレーは消極的でしかなく、宙に浮いていた。ディフェンスはともかく、こと攻撃に関するかぎり、中村は蚊帳の外にいた。

 とはいえ、おぼろげながらも中村の考えは分かる気がした。

「日本のサッカー」

 過去数年、中村から何度も聞いてきた言葉が、あらためて脳裏に浮かぶ。彼によれば、そのベースは「パス・サッカー」であり、ボールを動かし、人が動き、相手の守備を切り崩していくというスタイルだった。

「その連動性、コンビネーションの成熟度を高めることが重要」

 と、中村はワールドカップのアジア予選からことあるごとに漏らし、ゆえにメンバーの固定化傾向が強いジーコの起用法も歓迎していた。かぎられた強化スケジュールのなかでは、顔ぶれを変えないほうが、より練度を高めやすいからである。

<次ページに続く>

【次ページ】 中村が「日本のサッカー」に固執した理由。

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