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“告げ口”は是か非か。
議論を呼ぶペラルタ事件。
~MLBの不文律をめぐって~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byYukihito Taguchi

posted2012/07/13 06:00

“告げ口”は是か非か。議論を呼ぶペラルタ事件。~MLBの不文律をめぐって~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

昨季は71試合に登板し、プレーオフ進出に貢献。チームにとっても痛い“事件”となった。

 突然の降板だった。6月19日、ナショナルズ対レイズ戦の8回裏、レイズの救援投手ジョエル・ペラルタが投球練習を開始すると、審判団がマウンドに集まり、グラブを検査し始めた。その結果、使用禁止物質の松ヤニが付いていたとして、ペラルタは1球も投げることなく、退場処分を科せられた。

 松ヤニだけでなく、紙ヤスリでボールに傷を付ける行為のほか、打者のコルクバット使用など、米球界の不正は今に始まったわけではない。ただ今回は、レイズのマドン監督が反論したことを機に、論議が過熱した。というのも、ペラルタの松ヤニ疑惑が、プレー中に判明したわけでなく、事前にリークされたことが明確だったからだ。

「彼がやったこと、起きてしまったことは確か。だが、それが内部情報によるものだとすれば、由々しきことだ」

 2010年にナショナルズでプレーしたペラルタは、昨年レイズに移籍。古巣とのインターリーグ(交流戦)で登板するのは、この日が初めてだった。つまり、実際に打者に投げた球が、特異な変化をしたわけではない。かつての「仲間」が情報源だったことは確実で、試合後、ナショナルズのジョンソン監督は、事前に噂を耳にしていたことを認めた。

「誰から聞いたかなど関係ない。この話題は、早い時期から知っていた」

法令順守では妥当だが、球界内の不文律からすると拒否反応も。

 ペラルタの行為は、一切擁護されるべきものではない。ただ、マドン監督が反論したのは、元同僚が敵となった途端、不正を「告げ口」するという行為に危機感を抱いたからだった。

「歴史上の選手たちは、今まで100年以上もの間、彼ら自身で規制する方法を持ち続けてきたはずだ」

 コンプライアンス(法令順守)的な見地からすれば、ナショナルズ側の対応に問題はない。だが、球界内の不文律からすれば、拒否反応も多い。

 その後、8試合の出場停止処分を受けたペラルタは、静かな口調で言った。

「なぜ彼らがそうしたのかは分からない。どこから出たのか知りたいが、自分から聞くことはしない」

 ルールか、紳士協定か。退場劇の翌日、ナショナルズの投手数人がペラルタに近寄り、慰めの言葉をかけていた。その光景が、後味の悪さを薄めていた。

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