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最強チームの弟分はやはり最強?
スペイン五輪代表を解剖する。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2012/07/13 10:30

最強チームの弟分はやはり最強?スペイン五輪代表を解剖する。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

五輪代表期待のアタッカー、ムニアイン(右)。EL、国王杯で決勝に進出するなど欧州に衝撃を与えた新生ビルバオの象徴だ。

エレーラとイスコの2人が司令塔役の重責を担う。

 だがフル代表とは違い、このチームにはシャビ・エルナンデスのような絶対的司令塔がいない。最も適役と思われたチアゴの欠場が決まった今、「ラ・ロヒータ」のシャビとして期待されるのはアンデル・エレーラだ。ビルバオの司令塔としてマルセロ・ビエルサ監督のパスサッカーを体現している彼については、能力的には疑いの余地がない。問題は昨季終盤より抱える股関節痛の回復具合で、過密日程の中でフル稼働できるかどうかが心配される。

 もう1人の司令塔イスコは、現在スペインで最もアンドレス・イニエスタに近い選手だ。柔らかく足に吸いつくようなボールタッチでマーカーを翻弄し、自身に注意を集中させた上で急所を突くスルーパスを通す。そのスタイルはマラガでサンティ・カソルラと共にプレーする中で一層磨かれた感がある。

 この2人のバックアッパーとなるコケは、例えるならセスク・ファブレガスだろうか。中盤ではシンプルにボールを捌いてリズムを作り、機を見て前線に抜けだしゴールに絡むプレーは他の選手にはない持ち味である。途中出場で中盤に加えれば攻撃のアクセントとなるはずだ。

数的優位を保つために必要な「偽ウイング」ムニアイン。

 スペインが中盤を制圧するには、彼らMF陣のパスワークにウイングとサイドバックが加わり、常に数的優位の状況を保ち続ける必要がある。その点、このチームにはフル代表でも攻撃のキーマンとなった「偽ウイング」をこなせる人材がいる。イケル・ムニアインだ。

 直線的で馬力を生かしたドリブル突破が特徴のムニアインは、フル代表にはいないタイプのアタッカー。ビルバオでは本職のウイングに加え、攻撃的MFやトップ下でのプレーも覚えた。「メッシなきバルサ」と言われる現在のスペインにおいて、彼はそのメッシとなり得る選手かもしれない。

 フル代表ではなかなか出番が増えないものの、ラ・ロヒータにおけるフアン・マタは他の選手とは一段上のレベルのプレーで攻撃陣を引っ張る大黒柱的存在だ。シルバ役となるべきカナーレスの不在もあり、ゴールに直結する決定的プレーの多くは彼の左足から繰り出されることになるだろう。

【次ページ】 絶対的エースのロペスはEUROの無念を五輪で晴らす。

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