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スペインが「メジャー3連覇」の偉業。
“支配できずとも勝つ”新次元の強さ。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/07/02 13:20

スペインが「メジャー3連覇」の偉業。“支配できずとも勝つ”新次元の強さ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

優勝トロフィーを囲むスペインの選手たち(前列左からイニエスタ、セスク、ピケ、シャビ、後列左からブスケッツ、アルバ)。グループリーグでの対戦では苦しめられたイタリアだったが、決勝では圧巻の強さを見せ、史上初のユーロ連覇を成し遂げた。

徐々に機能性を高めていった“ゼロトップ”。

 スペインがやや苦しんでいたことは、前半終了時点のスタッツを見れば明らかである。ボール支配率は53%と彼らにしては低く、相手の司令塔ピルロにはやはり手を焼いた。それでも、前半終了間際の41分にはショートカウンターからチャンスを掴み、シャビのスルーパスに反応したJ・アルバがブッフォンとの1対1を制して追加点。2点のリードを手にして後半へと向かう。

 それからの流れは冒頭のとおりである。2点のビハインドを追うイタリアは後半立ち上がりにディナターレを投入し、攻撃を活性化。これが機能した約10分間は勢いを増してスペインゴールに迫ったが、“3枚目のカード”として57分に投入されたモッタは直後に大腿部を痛めてピッチを去る。追い掛けるイタリアは10人となり、なす術を失った。

 故障を抱えていたキエッリーニとモッタをピッチに立たせたことは、挑戦者イタリアにできる最大限の賭けだった。見方を変えれば、イタリアはそれほどまでに満身創痍の状態にあった。

ビジャやプジョルの不在をカバーしたスペインの層の厚さ。

 準決勝からの中2日というスケジュールは酷であるとしか言いようがない。しかしプランデッリの起用法やレギュレーションを巡る議論よりも、やはり特筆すべきは王者スペインの揺るぎない強さである。

 大会を通じて、デルボスケは最前線中央のポジションを何度も入れ替えた。しかしセスクを起用する“ゼロトップ”は試合を重ねながら徐々に機能性を高め、F・トーレスは途中出場から結果を残した。ポルトガル戦でスタメン起用されたネグレドは機能しなかったものの、最後まで出場機会のなかったジョレンテは存在感で相手の警戒心をあおった。

 振り返れば、最大の懸念事項であったはずのビジャやプジョルの不在は、大きな問題にはならなかった。

 シャビやイニエスタはいつもどおり軽快にパスをつなぎ、ゴールへの最高のタイミングを感じた時だけ、したたかに縦パスを通した。ブスケッツは相変わらず黒子に徹し、シャビ・アロンソは球足の美しい中長距離弾でアクセントを加える。セスクが“逃げる動き”でスペースを作り、シルバがそこに飛び込んで仕掛けるパターンも確立された。“センターバックのS・ラモス”が本職である右SBと同様にワールドクラスであることは、バロテッリとの駆け引きを追えば明らか。カシージャスの弱点はGKの本分ではない“つなぎ”以外にない。

【次ページ】 「支配しなくても勝てる」スペインへの進化。

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ビセンテ・デルボスケ
チェーザレ・プランデッリ

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