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<“五輪から3カ月”特別連載(2)> クロスカントリー・夏見円 「自分らしくスタートに立つ!」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byShino Seki

posted2010/05/18 06:00

<“五輪から3カ月”特別連載(2)> クロスカントリー・夏見円 「自分らしくスタートに立つ!」<Number Web> photograph by Shino Seki

4×5kmリレーで取り戻した「自分らしい走り」。

 スタート。夏見の走りは、スプリントのときとは違った。上位に食らいつき、粘り強さを見せる。すると、目標を上回るトップから15秒9差、6位と好位置で二走の石田正子につなぐことができた。石田が5位に順位を押し上げた後、順位を落とし9位だったものの(4月29日、上位国選手のドーピングの発覚により8位入賞となった)、夏見の言葉はそれまでとは違っていた。

「自分らしい走りができました。ようやくチームに貢献することができました」

 久しぶり見せた明るい表情だった。

 試合後、夏見はふと思った。

「スプリントのとき、自分は、どのような気持ちで、スタートに立っていたのか」

 そして気づいた。

「リレーが終わって、思い当たったんですね。ああ、スプリントのスタートのとき、私は自信を持っていなかったって。体調が戻ってきたからやれる、と思っていながら、シーズン中、大会で結果を残せずにオリンピックを迎えたじゃないですか。だから、大丈夫かなあ、とどこか不安だったんだと思う。でも、体調とかどんな状態であっても、自信を持って立てないと戦えない。別の言い方をすれば、調子がよくても自信がなければ勝てない。気持ちを強く持つことが大切なんだって思った」

「自分らしくスタートに立つこと。その重要さに気づきました」

 また、体調を崩して成績が低迷した頃から、周囲の選手の状況などを気にするようになっていたとも言う。以前は自然に集中してレースに臨めたのに、意識しなければ集中できなくなってもいた。

「スプリントのときも、そうでしたね。何かに頼りたいと、きょろきょろあたりを見回したり。落ち着いてなかったですね」

 好走を見せたリレーの日は、団体競技であることから、何があろうとやらなければいけないと必死になり、自信云々もなく、周囲も関係なく、集中できたのではなかったか。

 夏見も言う。

「はい。自分らしくスタートに立つこと。その重要さに気づきました」

【次ページ】 専門外の30kmクラシカルで掴んだ大きな自信。

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