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優勝候補ドイツに何があったのか?
イタリアに惨敗した“自滅”の真相。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/29 12:05

優勝候補ドイツに何があったのか?イタリアに惨敗した“自滅”の真相。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

フンメルスは「戦術的に優れた相手に0-2とされてしまうと、難しい」と語り、キャプテンのラームは「このチームにはポテンシャルがあった。だから、もっとできたはずなんだ……」と無念のコメントを残した。

これまでの好調な流れを断ち切るような意外なスタメン。

 果たして、イタリア戦のスターティングメンバーは、驚くべきものだった。

 ギリシャ戦からの変更は3選手。4-2-3-1の1トップにはクローゼに代えてゴメス。右MFはロイスに代えて、クロース。そして、デンマーク戦で1ゴールを決めたものの、グループリーグの3試合で全くと言っていいほど持ち味を出せていなかったポドルスキーを、シュールレに代えて再び左MFのスタメンに戻したのだ。

 たちの悪いジョークのように見えた。

 怪我の影響が心配されたデロッシやキエッリーニなどが先発に名を連ね、ファンを安堵させたイタリア代表の選手起用とは全く異なる感覚である。

 そもそも、初先発のクロースのポジションは、どうして右MFだったのか。今季、バイエルンで結果を残したトップ下でもなく、2シーズン前のレバークーゼン在籍時代に2カ月連続で『キッカー』誌の月間MVPに輝いた左MFでもない。チームのコンセプトに照らし合わせても、理解に苦しむ。

 大会前、レーブのブレーンであるアシスタントコーチのハンス・フリックが、チームのコンセプトをこのように明かしている。

「プレーするスペースを用意して、奥行きを広げるために、サイドのMFは広がりを持つように(外に開いた)ポジションをとる」

 ここで語られたサイドのMFのコンセプトからすれば、クロースの右MFでの起用はふさわしくない。

 そして、決定的だったのは、今回の選手起用がチームの士気を下げたことだ。

選手たちの気持ちを無視した選手起用で、一気に下がった士気。

 準々決勝のギリシャ戦でスターティングメンバーを入れ替えた際には、グループリーグではチームとしての攻撃が機能していなかったという理由があった。

 しかし、今回は違う。

 ドイツメディアのアンケートで大半の人がイタリア戦での起用を望んでいたロイスも、レーブ監督が「周囲とのコンビネーションではゴメスに勝る」と話すクローゼも、ベンチに置いてしまった。攻撃のタクトを振るエジルがギリシャ戦のあとに、実際、こう語っていたのだ。

「メンバー変更の恩恵を受けたよ。外に開いてプレーする選手がいたことで、中盤の動きが活性化された。それによって、僕もプレーしやすくなったんだ」

 レーブ監督の決断は、そうした選手たちの士気に水を差すことになってしまった。さらに、詳しくは後述するが、この試合では恐るべき場面までもが見られることになる。

【次ページ】 即興のコンセプトが破たんし、選手が迷い出したドイツ。

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