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バロテッリこそユーロ制覇のカギ。
新世代アズーリがイタリアを変える! 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byAFLO

posted2012/06/28 10:30

バロテッリこそユーロ制覇のカギ。新世代アズーリがイタリアを変える!<Number Web> photograph by AFLO

EURO準々決勝のイングランド戦、11本のシュートを放つも得点をあげられなかったバロテッリだったが、PK戦では自ら最初のキッカーに名乗りをあげ、マンチェスターCで同僚のGKジョー・ハートから見事ゴールを決めた。

生まれも育ちもイタリアのバロテッリとオグボンナ。

 イタリアの法制上、両親が外国人であっても、10年以上の滞在期間を持つことなどを条件に、その子息は満18歳になるのを待って同国市民権を取得することが可能になる。バロテッリとオグボンナは、ともに生まれも育ちもイタリアで、揃ってアンダー世代から注目されていた逸材だった。

 彼らの“母国”はイタリア以外にない。ただし、肌の色だけでそうは思わない人々がいることも、彼らは20年余の人生で十分知っている。

 オグボンナは、移民排斥路線で知られる極右政党から「外国人を代表に入れるな」と名指しで非難された。

 EURO今大会のクロアチア戦でも、バロテッリに対して大量のブーイングとバナナが投げ込まれる事件があった。

「差別はどこにでもある」とバロテッリは語るが……。

 まだエドガー・ダービッツがユベントスでプレーしていた頃の話だ。

 南イタリアのある地方スタジアムでの試合中、ボールを持った彼に「この猿め!」と叫ぶのが背後から聞こえた。振り返ると、嘲笑と憎悪の混じった声の主は、身なりのいい金髪の中年婦人だった。驚くと同時に、保守的なこの国に潜む人種差別の根の深さを見た思いがした。

 もちろん、この手の話題はどの国でも、どんなカテゴリーでも事欠かない。4年前、まだセリエAにデビューしたばかりのバロテッリは語っていた。

「差別は、イタリアにも、サッカー界にも、どこにでもある。肌の色のことで喧嘩しようとは思わない。ただ、プレー中に突き飛ばされたら、相手のスパイクを踏んづけてやる。それだけだよ」

 複雑な出自を背負う彼らだからこそ、代表への思いは強い。

【次ページ】 “問題児”を庇護し、矯正するプランデッリ監督の父性。

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マリオ・バロテッリ
チェーザレ・プランデッリ
アンジェロ・オグボンナ

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