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最速ストーナー、
早すぎる現役引退表明の真相。
~金でも待遇面でもなく~ 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

PROFILE

photograph bySatoshi Endo

posted2012/06/26 06:00

いま最も乗れている最速ライダーだけに、突然の引退表明はGP界に大きな衝撃を与えた。

いま最も乗れている最速ライダーだけに、突然の引退表明はGP界に大きな衝撃を与えた。

 昨年、圧倒的な強さでチャンピオンを獲得し、今年2連覇の期待がかかっているC・ストーナーが、シーズン序盤の第4戦フランスGPで、今季を最後に引退することを表明した。

「家族や妻と長い間、話し合ってきたが、今年を最後にモトGPを引退する。そして、別の人生を歩むことにした。考え始めてから2、3年が経つ。大好きな競技を長くやってきたが、自分自身も家族も多くの犠牲を払ってきた。この世界も変化してきて、レースを楽しめなくなった。それならいま、辞めるのがいいと思った。辞めるからと言って、残りのシーズンは何も変わらない。出るからには勝ちたいし、110%以上の走りをしたい」

 話すことをすでに決めていたのだろう。思ったこと、感じたことを、そのまま言葉にするストーナーらしい歯切れの良い引退表明だった。所属先の中本修平HRCチーム代表は、昨年の暮れ、ストーナーに'12年を最後に引退することを告げられた。キャリア絶頂期、今年27歳という早すぎる引退を慰留したが、「金でも待遇面でもない」という決心を翻すことは出来なかった。

天才ライダーの潔い言葉が与えた大きなインパクト。

 オーストラリア出身で、'01年、15歳で125ccにGPデビューした。そして、125ccで2勝、250ccで5勝を挙げた後、'06年、最高峰モトGPクラスでホンダを駆り才能を開花させた。'07年にはドゥカティに移籍してチャンピオン獲得。'11年にマシンの安定性と速さに定評のあるホンダに復帰し、現在モトGP通算35勝を挙げている(6月13日時点)。

 正々堂々という言葉が、そのまま当てはまる、何事にも真っ直ぐなライダーである。コース上でもマシンを降りても駆け引きなし。政治的な理由で戦いがゆがめられるのを何よりも嫌う。スポーツ性が軽んじられ、ショービジネス化が進むレース界にうんざりしたのも引退の理由のひとつだった。

「世界チャンピオンになることが夢だった。それは楽な道のりではなかったが、素晴らしい挑戦だった。だけど、嫌いになるまでレースを続けたくない。だから、いま、辞めることに後悔はない」

 グランプリ史上、最速ライダーのひとり。速すぎた天才ライダーの潔い言葉は、その走り以上に大きなインパクトを与えるものだった。

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