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井岡vs.八重樫の激闘を徹底検証。
本物の世界戦で本物の王者を見た! 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2012/06/21 11:30

井岡vs.八重樫の激闘を徹底検証。本物の世界戦で本物の王者を見た!<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

対戦中、何度もドクターストップ寸前までいったが、八重樫は「僕はもともと目が細い顔なんですよ! 続けさせて下さい!」と言い続けた。井岡は今後はライトフライ級に階級を上げて2階級制覇を目指すことになる。八重樫も同様に階級を上げ、再戦の意志を表明している。

今回の統一戦で尽力した大橋会長と井岡会長の功績。

 今回の統一戦実現においては、八重樫サイドの大橋秀行会長の英断がまず初めにあった。

 日本プロボクシング協会のトップも務める大橋会長は、統一戦の実現がボクシング人気回復の手段として欠かせないと考えていた。だからこそ、テレビ局と話をまとめ(八重樫の世界戦を放映していたのはテレビ東京だった)、敵地である大阪に乗り込むことを厭わず、統一戦をスムーズに実現させた。

 八重樫よりも知名度の高い井岡は、負ければ失うものが大きく、そういう意味では井岡弘樹会長の心意気も素晴しかった。

 ジムの思惑やテレビ局との交渉を乗り越えた今回の一戦が成功したことで、今後、統一戦は主流となっていく可能性が高まったのではないだろうか。

粟生、内山、山中、亀田……好カードの材料は揃っている!

 WBC世界スーパーフェザー級王者の粟生隆寛(帝拳)は「気持ちが盛り上がってきた」と話し、同じくWBA同級王者の内山高志(ワタナベ)も「やるしかない」と興奮気味だった。

 バンタム級も、WBCの山中慎介(帝拳)、WBAの亀田興毅(亀田=現在は休養王者)と日本人チャンピオンが顔をそろえる。統一戦ではないが、スーパーバンタム級でWBCの名誉王者となっている西岡利晃(帝拳)と、バンタム級タイトルを10度防衛した長谷川穂積(真正)との対戦が実現しても、ファンは試合会場に殺到することだろう。

 ハイレベルな技巧を有するボクサー同士が、高いモチベーションでリングに上がれば、好ファイトが生まれ、見ている者に喜びと興奮を与えられる。そんな当たり前の現実を、井岡と八重樫はあらためて教えてくれた。世界タイトルマッチという額縁だけ立派な贋作のようなファイトには、だれもお金を払いたくないし、テレビの前に座ろうとも思わない。本物のスターも好カードの中からしか生まれないのである。

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