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カナダGP2位のグロージャンを支えた、
“文系”F1エンジニアの小松礼雄。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byMasahiro Owari

posted2012/06/14 10:30

カナダGP2位のグロージャンを支えた、“文系”F1エンジニアの小松礼雄。<Number Web> photograph by Masahiro Owari

1980年代後半、日本GPでセナとプロストが戦っていたのを非常によく覚えていると語る小松。当時、日本のF1シーンにどっぷり浸っていたことで、F1業界を目指すようになったという。

コンピューターに頼らず「心」で仕事をするエンジニア。

 ウインターテストの間、グロージャンとミーティングを重ね、意思の疎通を図った。コンピュータが駆使される現在のF1でも、最終的な判断を行うのは人間であり、その判断に基づいてマシンをドライブするのも人間である。したがって、ドライバーとエンジニアが意見を対立させることも珍しくない。そのとき、大切なのが普段からのコミュニケーションである。しかし、エリートが集まるレースエンジニアの中には、得てして自分がもっとも偉いと勘違いしている者も少なからず存在する。ところが挫折を味わいながら這い上がってきた小松は、コンピュータのデータだけに頼らず、ドライバーと心を通わすことに精力を傾ける数少ないエンジニアだった。

 そして、その小松がカナダGPのレースに向けて立てた作戦が、今年のピレリタイヤでは難しいと思われたモントリオールでの1ストップ作戦だった。小松はそれを成功させるために金曜日のフリー走行1回目から、グロージャンに22周のロングランという難題を課した。グロージャンも小松の期待に応え、チームメートのキミ・ライコネンよりも、速いペースを刻んだ。小松に迷いはなかった。「1ストップで行ける」と。

 自由な発想と類い希なる努力で、常識を覆す小松らしい解を導き出す方程式だった。そして、それはレース残り4周で、'09年にチームメートだったフェルナンド・アロンソをオーバーテイクして、正解となったのである。

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