詳説日本野球研究BACK NUMBER
新時代の早大が東京六大学を制す!
光った“全力疾走”と若き投手陣。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/05/31 10:31
昨夏の甲子園で日大三のエースとして優勝に貢献した吉永健太朗は、早大でも即戦力として大活躍。1年春の4勝は2007年斎藤佑樹(早大)以来史上5人目。4戦4勝は29年小川正太郎(早大)以来2人目で、戦後初の快挙である。
3連覇達成時のチーム状態を彷彿させる走塁の冴え味。
今年の亜大は3連覇を達成した'02~'03年当時のチームによく似ている。5月9日の東洋大戦では4人(6回)がタイムクリアを果たし、盗塁企図3(成功2)も上々の成果である。この試合で東洋大の岡翔太郎捕手が記録したイニング間の二塁送球タイムは最速1.85秒。この強肩をかいくぐって敢行した盗塁は成功・不成功にかかわらず価値がある。「野選1、暴投1、捕逸1」も全力疾走の副産物といってよく、亜大の走塁の冴えがよくわかる。
タイムクリアを果たした4人の名前も紹介しよう。
<中村毅3.76秒、*二塁到達8.16秒、高田知季4.19秒、中村篤人*二塁到達8.08秒、*三塁到達11.77秒、藤岡裕大*二塁到達7.50秒>
打撃成績の最高順位は中村毅の15位で、打率は.278。それに対して盗塁数は高田の5個がリーグ2位と、亜大の特徴がよく出ている。
リーグ1位の防御率を誇る東浜の完成度はプロ級!?
この野手陣をバックに投げるのがリーグ通算31勝、21完封を達成した東浜巨(4年)で、投球フォーム、持ち球が東浜に酷似する九里亜蓮(3年)が2回戦で投げるというのが亜大の基本線。今季成績は東浜が5勝1敗、防御率0.92(リーグ1位)で、九里が2勝2敗、防御率2.25(5位)と、安定感は十分である。
とくに東浜の投球は見応えがある。ツーシームを軸に、スライダー、チェンジアップ、フォークボール、カーブを交えたピッチングはプロでの活躍を視野に入れた完成度の高さを誇り、攻略は至難の技と言っていい。
因縁浅からぬ両校のつばぜり合いが神宮を暑くする!
亜大の弱みは全国大会の勝利から遠ざかっている点だろう。昨年秋の明治神宮大会では初戦で愛知学院大に完封負けを喫し、優勝はそもそも'06年秋以来と、近年の低迷ぶりをうかがわせる。
勝つのが当たり前だった'00~'03年は僅差で粘り勝ちする野球を身上とし、大学選手権は'00年が5対4で東北福祉大を、'02年が2対1で早大を退けて優勝している。この当時の野球を再現するメンバーが今年は揃っている。
早大と亜大が決勝に進出すれば早大にとっては10年ぶりの雪辱戦になり、亜大が勝てば10年ぶりの大学選手権優勝となる('06年の明治神宮大会でも両校は決勝で対戦し、亜大が5対2で早大を破っている)。因縁浅からぬ両校の激突は、斎藤佑樹の卒業でおとなしくなった神宮球場のスタンドに再び観客を動員する可能性を秘めている。私はそれを期待している。