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3連覇東レが披露した、
最後の頂点の極め方。
~総合力がもたらした逆転優勝~ 

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久保大

久保大Masaru Kubo

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photograph byMichi Ishijima

posted2010/05/11 06:00

3連覇東レが披露した、最後の頂点の極め方。~総合力がもたらした逆転優勝~<Number Web> photograph by Michi Ishijima

菅野監督は「選手が個々の役割をこなして最後にベストのゲームをしてくれた」と讃えた

 頂点を極めるのに、最後に必要なものは何か。それを考えさせられた一戦だった。バレーボール・Vプレミアリーグ女子の決勝戦は、東レがJTを下し史上初の3連覇を果たした。戦前の予想では、リーグ戦を26勝2敗、上位4チームによる準決勝ラウンドも3戦全勝の1位で抜けたJTが有利と見られていた。

 東レは、ともに2位だったものの、準決勝ではJTにストレート負け、勝った2試合はいずれもフルセットという薄氷を踏む決勝進出だった。しかし、一発勝負の決勝では第1セットをデュースの末奪うと、そのまま3-0で押し切った。

 菅野幸一郎監督も、MVPに輝いた木村沙織も、「勝因は全員の力」と口をそろえた。木村はこう言葉を補っている。

「勝つために何をすればいいか、チーム全員がわかっている」

 準決勝から、決勝まではわずか6日。その間のチームの雰囲気は壮絶だった。木村はプレッシャーで食欲が落ち、体重も減った。これまでのバレー人生で一番緊張した試合だったという決勝、木村は勝負所となった第1セットで12点を決めるなど、攻守でチームを引っ張った。故障もあり不調にあえいでいた荒木絵里香は67%の決定率を残した。今季レギュラーをつかんだ22歳の迫田さおりを時に叱咤し、17点を決めさせたセッター中道瞳のトスまわしも素晴らしかった。

控え選手を含めた総合力で強敵JTの勢いを封殺した東レ。

 ただ、1勝4敗と負け越していた対戦成績からもわかるように、スタメンだけを比較すれば、韓国のエース、キム・ヨンギョンに加え全日本経験者4人を擁するJTの方が上だったかもしれない。

 事実、第1セットは一時3点差をつけられ、セットポイントを許す場面もあった。だが東レは、終盤の競った局面で投入された控え選手がことごとく役割を果たした。一方、第1セットを落としたJTは交代選手をコートに送ったが、流れを変えることはできなかった。東レの強さは控えも含めて、ピークを決勝にもってこられたことにあった。

「全員」とは選手だけではない。ヨンギョン以外を一ケタ得点に抑え込んだ戦術。高校時代、無名の迫田をスカウトし、4年かけて成長させた育成。監督、コーチ、スタッフ全員の力が結集した結果が、逆転優勝だった。それは、勝ってきた者だからこそできる、頂点の極め方だった。

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