日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER

W杯最終予選直前に改めて認識した、
9カ月ぶり復帰の“本田効果”とは? 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byMiki Fukano

posted2012/05/24 12:20

W杯最終予選直前に改めて認識した、9カ月ぶり復帰の“本田効果”とは?<Number Web> photograph by Miki Fukano

シーズンオフのためコンディション面が心配された欧州組の選手たちだったが、溌剌としたプレーを披露。宮市亮、酒井宏樹、高橋秀人(写真右)らA代表デビューを飾った新戦力もそれぞれの特長を発揮し、ザッケローニ監督の期待に応えた。

自らの持ち味を見せた、宮市らA代表デビューの新戦力。

 この前半だけで日本のシュートは11本。司令塔の遠藤保仁が不在のため、下がり気味にプレーしてほぼチャンスメークに徹した本田のシュートは前半は2本のみに終わったが、縦、斜め前のパスを繰り出すことによって「ゴールに向かえ」という意思表示をはっきりとチームに示していた。チーム全体の決定力不足は課題として残る。しかし、シュートまでなかなか持ちこめなかったウズベキスタン戦のことを考えれば、シュート数の増加はプラス材料として受け止めたい。ジャブを執拗に放った結果が、あの先制点につながったのだ。

 後半には香川のクロスを本田が頭で落として岡崎が追加点を挙げた。本田をはじめシーズン後のコンディションが懸念された欧州組ではあるが、思ったほどコンディションの悪い選手がいなかったことも、6月3日のオマーン戦(ホーム)からスタートするブラジルW杯アジア最終予選に向けての明るい材料だったと言える。

 そしてもうひとつ収穫だったのはA代表デビューの新戦力組。

 後半開始から入ってきた酒井宏樹は正確なクロスで本田のシュートにつなげたばかりでなく、空中戦で相手に一度も負けることなく、落ち着いて守備をこなしていた。また“ジョーカー”として期待される宮市亮は初速からトップギアに入るスピードで縦に仕掛けて突破を図るなど見せ場をつくり、強烈なミドルシュートも披露している。

 ボランチに入った高橋秀人も最初こそボールが足元についていない印象だったが、次第に視野の広さを発揮していった。それぞれが自分の特徴を出そうとしたことに、指揮官も「きょうデビューした3人は非常にいい出来。この3人以外、個人に関する質問は控えてもらいたい(笑)」と会見でジョークを飛ばすほど上機嫌であった。

課題は、最終予選に向けた“カウンター対策”。

 本田の復帰による攻撃力の向上、フィジカルコンディションの確認、そして新戦力のアピール。

 収穫の多い試合となったのは事実だが、一方で課題も多く見つかった。ウズベキスタン戦のように全体に間延びしてしまう時間帯もあり、この点は長谷部も「(間延びしていたときには)いいボール回しができていなかった。ポジティブなところもネガティブなところも両方出た」と証言している。

 また守備ではカウンターの脅威にさらされた場面もあった。前半ロスタイム、長友佑都のクリアからセカンドボールが拾えず、ズルズルと下がってクロスからシュートへとつなげられた。「うしろ(最終ライン)で1対1をつくられているところがある。そこはサイドバックが絞るかどうかを含めて、その辺もしっかりやりたい」と長谷部。無失点で抑えた栗原勇蔵も「何度かやられた。ワンチャンスで決められてしまってはいけない」と気を引き締めていた。6月にW杯アジア最終予選で対戦するオマーン、ヨルダンは堅守速攻を武器としており、カウンター対策はまだまだ詰めていかなければなるまい。

【次ページ】 反省点を挙げながらも活気に満ち溢れていた本田の顔。

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