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マンチェスター両雄の歓喜と屈辱。
プレミアの新たな2強時代、始まる! 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/05/25 10:31

マンチェスター両雄の歓喜と屈辱。プレミアの新たな2強時代、始まる!<Number Web> photograph by AFLO

10万人を集めた44年ぶりの優勝パレード。マンチーニはバスの上からファンにカメラを向け、コンパニがトロフィーを掲げるたびに喝采があがった。

決勝ゴールを決めたアグエロは一度は勝利を諦めていた。

 コンパニは、1対2とされても「諦めていなかった」と言い、第22節トッテナム戦(3-2)と、第31節サンダーランド戦(3-3)でのカムバック劇を自信の源として挙げた。だが、これは優勝したからこその発言だろう。フルタイムの時点で「もう駄目だと思っていた」と告白しているのは、逆転ゴールを決めたセルヒオ・アグエロだ。

 アグエロに「ひょっとして」と思わせたのは、同点ゴールの力。得点者は69分に投入されたエディン・ジェコ。アシストは75分に入ったマリオ・バロテッリ。信頼度が疑問視され、定位置を取れなかった両FWは、最後の最後に大仕事をした。「枠内に思い切り」と、劇的な決勝ゴールを蹴り込んだアグエロは、折り重なるチームメイトの下で嬉し涙を流した。覚悟ができていた者はスタンドで、耐え切れずに席を立った者は帰宅途中で、マンCのファンは、信じ難い最終節の結末に歓喜の声を上げた。

重圧から解放された監督は「一気に90歳になった気分だ」。

 しかし、最終的には、マンCが優勝すべくして優勝したと言える。リーグ最高の93得点とリーグ最少の29失点という数字が、王者としての資格を物語る。シーズンの大半を首位で過ごした集団は、個人レベルでも最高の出来を示した。

 GKのジョー・ハートは、リーグ最多の17試合を無失点で終えた。CBのコンパニは、地味な「守備の人」でなければ、リーグ選定よりも価値のある、選手協会と記者協会による年間最優秀選手にも選ばれていたことだろう。プレミアでも増え始めたダブルボランチの一角で、Y・トゥーレほど攻守に存在感を見せたMFはいない。トップ下のダビド・シルバはリーグ最高の15アシストを記録。エースのアグエロも、開幕戦から最終節まで、コンスタントにゴールを決めた。23得点はリーグ3位だが、得点王(30得点)のファンペルシはプレミア8年目。アグエロは、まだ1年目だ。

 ロベルト・マンチーニも、年間最優秀監督の栄誉を与えられて然るべきだろう。実際の受賞者は、ニューカッスルのアラン・パーデュー監督。だが、5位でも予想以上のニューカッスルと、優勝争いが大前提と言われたマンCでは、指揮官が抱えるプレッシャーが桁違いのはずだ。

 その中で、マンチーニは、テベスの謀反など内紛の火種まで抱えながら、昨季はトップ4最低だった得点数(60)のみならず、既にリーグ最少だった失点数(33)まで改善し、プレミア制覇を実現している。「一気に90歳になった気分だ」と、最終節を振り返った優勝監督は、47歳とは思えぬ巧みな腕前を披露した。

【次ページ】 プレミア連覇に向けての障害は、FFP規則と巨額の赤字。

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