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モウリーニョと「後の先」の守り。
~CL決勝は知将同士の心理戦に!~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2010/05/09 08:00

モウリーニョと「後の先」の守り。~CL決勝は知将同士の心理戦に!~<Number Web> photograph by Getty Images

注目の決勝は、日本時間5月22日深夜キックオフ予定

 モウリーニョが走った。両手の人差し指を高々と掲げ、思いがけないほどの速さでカンプノウのピッチ中央に走り出た。なにを叫んでいるのかはわからない。たぶん、インテルのサポーター席に向かって雄叫びをあげているのだろう。それをバルサのファンに対する挑発と誤解したのだろうか、相手のGKビクトル・バルデスがさえぎろうとした。幸い、ふたりがもつれ合った時間は長くなかった。見苦しいつかみ合いにも発展しなかった。

 それにしても、モウリーニョの采配は見事だった。4月28日のチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ。インテルはこの試合を0対1で落としたものの、2試合合計3対2のスコアでバルサを降し、45年ぶりの欧州制覇にまた一歩近づいたのである。

0対2での敗戦をどう避けるかに全力をあげたモウリーニョ。

 インテルはどう戦うのだろうか。セカンドレグの試合前、最も頻繁にささやかれたのは「堅守速攻」の予想だった。まあ、無理もない。3対1のリードは、0対2の敗戦ですべてひっくり返ってしまうのだ。よしんば1対3で敗れて延長戦に突入しても、形勢は追い上げるバルサの優位に傾くと見てよいだろう。つまりモウリーニョは、試合全体を「ロースコアのしのぎ合い」に持ち込む必要があった。0対0や1対1なら文句なしだが、限界点は「0対1の敗戦」だ。だとすれば、優先されるべきは「堅守」だ。

 その線に沿って、モウリーニョはプランを立てた。試合開始直前、パンデフに代えてキブを起用したことで、守備的な姿勢はより明らかになった。さらに前半28分、モッタが退場処分を受けて、インテルは10人で戦わなければならなくなった。

陣形を捨て去り守りに徹した究極の“プランB”!?

 モウリーニョはここで「プランB」を掲げた。4-2-3-1の陣形を惜しげもなく捨て、4-3-2-0、ときには5-3-1-0に見える陣形でヴァイタルエリアを固めたのだ。いいかえれば、インテルはバルサにボールを持たせても守りの形を崩さなかった。バルサのボール保持率(前半)は78%だったものの、枠内に放たれたシュートはわずかに1本。

 後半に入ると、インテルの陣形は4-5-0が基本になった。たまには6-2-1や9-0-0の形さえ取ったが、その守り方は実に沈着だった。なにしろ、彼らはあわてないのだ。うろたえることも浮き足立つこともなく、さりとて「愚直」に守りを固めている印象も与えない。そう、インテルは終始一貫、「後の先」を取っていた。ボックス手前でのシャビとメッシのワンツーは封じられ、62分にイブラヒモビッチがピッチを去ったあとの制空権も完全にインテルのものだった。

【次ページ】 「かつての上司」ファンハールとモウリーニョの心理戦。

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