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格闘技なんて「怖くない、痛くない」。
ジムで体感できる一流選手の必殺技。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2012/05/22 10:30

格闘技なんて「怖くない、痛くない」。ジムで体感できる一流選手の必殺技。<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

写真、総合格闘技ジム『TRIBE TOKYO M.M.A』の代表を務め、自身も日本屈指のファイターである長南亮選手(前列左から4番目)。そして、現役パンクラス王者である清水清隆選手(前列左端)。同ジムのトレーナーを務めるニック永末氏(後列左端)。そして、指導を受けた「格闘技未経験」の皆さん。

格闘技未経験者へ、ハードルを下げるという試み。

 では、“Doスポーツとしての格闘技”のハードルを、下げられるだけ下げてみよう。

 都内に総合格闘技ジム『TRIBE TOKYO M.M.A』を構える現役選手・長南亮の発案で、筆者がライター仲間と行なっているトークライブ『格闘秘宝館』のスピンオフイベント『格闘秘宝館Do!』を5月12日に開催してみた。

 ターゲットは格闘技未経験の“ド素人”。格闘技を習ってみたいけど体力に自信がないしちょっと怖いし……という人たちに向け「じゃあ、そういう人ばかりで集まって体験入門してみましょう」という企画だ。

 当日、参加したのは20名の格闘技ファン。その大半は未経験者で、ジョギングなどの軽い運動もしていない人も多かった。

 練習メニューはストレッチから始まり、タックル、腕ひしぎ十字固めとアキレス腱固め、パウンド(グラウンドのパンチ)とエルボーのミット打ちなど。

 パウンドやヒジ打ちを“競技者”として練習する必要があるのは、ごく一部の人間だけだ。アマチュアではほとんどの大会で禁止されている。そんな技を長南がメニューに組み込んだのは“ファンとして見てきたもの”を体験して、楽しんでもらおうという狙いがあったからだ。練習する人=競技者ではないのである。

見てきたあの技を体験することで気分は、“ヒョードル”。

 長南いわく「どうせ運動するなら、好きな格闘技の技を習ったほうが楽しいじゃないですか。その程度の気持ちで来てもらっていいんですよ」。

 筆者も実際にやってみたのだが、不格好なパウンドでも気分だけはヒョードルになっている。そんな“気分”を味わいながら汗を流すのも、またスポーツなのだと思う。

 パウンドなんて誰もやったことがないから、みんなヘタクソ。だから恥ずかしいこともない。

 ここでは“できない恥ずかしさ”を味わわされることがない。そもそも、いい大人が“できない人”を笑ったりはしない。ジムでの練習は、部活や体育の授業とはまったく違うものなのだ。

 最初は「見学だけでもいいですか」と申し込んできた51歳の女性も、気がつけばすべてのメニューを消化していた。「学生時代、一番嫌いなのが体育の授業だった」、「一度も跳び箱を飛べたことがない」という彼女だが、腕十字の極め方には興味津々だった。

【次ページ】 現役の一流アスリートの指導が受けられるという特長。

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