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統一球はメジャー球より飛ばない!?
MLB側から考える本塁打減少の理由。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byKyodo News

posted2012/05/13 08:01

統一球はメジャー球より飛ばない!?MLB側から考える本塁打減少の理由。<Number Web> photograph by Kyodo News

統一球の導入前とその後で、ほとんど成績が変わっていないターメル・スレッジ。昨年は故障で出場試合数を減らしたが、本塁打も20本以上(打率は向上)という活躍をみせていた。

打者を二重に苦しめる、飛ばずに動く難攻不落の統一球。

 最近のことだが、ある米国人記者が面白い記事をまとめた。

 近年のメジャーの投高打低は、“脱ステロイド/脱薬物”時代への移行もさることながら、マリアノ・リベラ投手の球種、カッターがもたらしたものだと論証している。

 リベラの代名詞と言えばカッターだ。確かに彼の登場以来、カッター、ツーシームという、いわゆる“動く速球”が投手の間で急速に浸透し、現在、その繁栄期にある。

 今では球速150キロを超す本格派投手でさえ、カッター、ツーシームを投げるのは当たり前となっており、その典型的な投手がロイ・ハラデー投手であり、ダルビッシュ有投手なのだ。

 あえてダルビッシュの名前を挙げたが、日米両国間での選手交流が活発化する中で、日本の投手の間でも、この“動く速球”が広く浸透し始めている。

 メジャーでもまだ完全に攻略できていないこの球種が日本に入ってきて、日本の打者が苦労しているところに、さらに追い打ちをかけるように統一球が導入された。そのことで、打者が“動く速球”と“統一球”という二重の苦しみに直面しているのが現状だといえる。

“統一球”の攻略こそ、メジャーに追いつく最大の方法。

 まさに打者にとって受難の時代だというのは重々理解できる。

 だが、改めて統一球が導入された基本理念に立ち返ってほしい。世界基準のボールを使用することで、国際大会でも日本が実力を発揮できることに目的を置いていたはずだ。

 まだ来年のWBC参加も厳密には確定していない状況ではあるが、やはり今のままではメジャーの一流投手たちと対等に渡り合うのはかなり厳しいだろう。

 いつしかメジャーで本塁打争いができるような、そんな日本人長距離打者が現われるためには、統一球と正面から向き合い、それを攻略することこそが最大の解決策に思えて仕方がない。

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ターメル・スレッジ
北海道日本ハムファイターズ

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