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Jにいながら欧州の感覚を養う方法。
酒井高徳にみる意識改革のヒント。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byItaru Chiba

posted2012/05/04 08:01

Jにいながら欧州の感覚を養う方法。酒井高徳にみる意識改革のヒント。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

昨年末、岡崎慎司も所属するドイツの名門シュツットガルトに期限付きで移籍した酒井。わずか1カ月でレギュラーを獲得し、地元紙のコラムに「我々は今すぐにでも彼を帰化させるべきだ」と書かれるほどの活躍を見せている。

酒井が仕掛けている、日本的テンポ・マネージメント。

 まずはシュツットガルトの“問題点”から触れよう。

 彼らはあまりにも前に行く意識が強く、テンポが速すぎる部分がある。ボールを奪ったらどんどん前に仕掛けようとして、流れを落ち着かせようという判断をする選手がいないのだ。だから、後半にバテて相手にチャンスを与えてしまうことがある。

 その中において酒井高徳は意識的にチームにブレーキをかけようとして、「『落ち着け!』というメッセージを込めて横パスを出している」と言う。酒井が先発するようになってからシュツットガルトが安定し始めたのも、こういう日本的テンポ・マネージメントと無縁ではないはずだ。

 ただし、これは日本人選手が万能ということではない。

Jリーグのテンポやスタイルを“当たり前”としないこと!

 一方のJリーグを見ると、シュツットガルトのような前へ前へ無鉄砲にしかける気質が弱い部分がある。

 Jリーグの場合、みんながテンポに気を遣えるばかりに、攻撃がゆっくりになってしまう時間帯が長いのだ。

 もちろんJリーグの試合でも守備から攻撃への切り替えが速いシーンがたくさんあるが、シュツットガルトのアグレッシブさからすると、酒井は記憶と照らし合わせて「遅いときがある」と感じるのだろう。日本の攻撃は速いように見えて、まだまだ無駄な横パスやパスのつなぎが多いことは間違いない。

 だが、これを改善するのは、それほど難しくないだろう。なぜなら酒井高徳は、たった1~2カ月で新たなプレースタイルを手に入れられたのだから。

 外国に飛び出た選手が劇的に増え、彼らが欧州との違いを明確にしてくれることで、国内にいながらにして課題に取り組むことが可能な時代になりつつある。大事なのはJリーグのテンポやスタイルを、“当たり前”として受け入れないことなのだ。

【次ページ】 欧州移籍組から読みとれた、Jリーグに必要な改革とは?

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