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帰ってきた北島康介が
水面で見せた新たな姿。
~復活した金メダリストの○と×~ 

text by

川上康介

川上康介Kosuke Kawakami

PROFILE

photograph byTakao Fujita

posted2010/05/02 08:00

無冠に終わるも、100mの2位でパンパシ選手権代表の座を獲得

無冠に終わるも、100mの2位でパンパシ選手権代表の座を獲得

「こんなに簡単に出るなんて」

 4月13日から6日間にわたって開催された競泳日本選手権。国内では本格復帰第1戦となった北島康介は、初日の50m平泳ぎ予選でいきなり27秒30の日本新記録を樹立した。直後の記者会見、満面の笑顔で語ったのが冒頭の台詞だ。しかしこの「簡単に」記録が出たことが、今大会、その後の北島にとってマイナスに作用した。

「今回は、勝負や記録にはこだわらないつもりでした。でも練習で調子が良かったことと、初日のレースで記録が出たことで欲が出た。『勝てる。勝ちたい』って思ってしまいました」

 決勝では、力みのある泳ぎでタイムが伸びず2位。さらに翌日からの200mにも“後遺症”が残った。

「勝ちたい気持ちが先走って、伸びのない泳ぎになってしまった。自分の泳ぎができなくてショックでした」

「最高の一瞬を味わわせてくれるのは、水泳しかないんです」

 北京五輪後、進退を問われると「4年も先のことなんか考えられない」と、1年間プールに入ることすらしなかった。ロンドン五輪を目指すとなると、出場時は29歳。20歳前後がピークと言われる水泳競技においてはかなり厳しい。一時は引退も噂され、本人もギリギリまで悩んだ。そして出した結論は、現役続行。時間をかけて自分と水泳を見つめ直し、その上でロンドンに向かう苦難の道を選択したのだ。

「結局、泳いでいるのが一番楽しいし、好きなんですよ。練習は苦しいし、プレッシャーもある。嬉しいのは、本当に一瞬でしかない。それでも僕にその最高の一瞬を味わわせてくれるのは、水泳しかないんです」

 練習を開始したのは昨年夏。北島はロサンゼルスに拠点を移し、単身練習を重ねている。大会直前に平井伯昌コーチの指導を受けたが、それも自ら志願してのこと。現状、スイマー北島のすべての管理を彼自身が行なっている。

<次ページへ続く>

【次ページ】 コーチにすべてを委ねず、自ら思考し泳ぎを進化させる。

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