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見事に掴んだ開幕ローテ。
下柳剛、22年目の挑戦。
~田中将大の負担を軽減できるか~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byKYODO

posted2012/04/15 08:00

4月8日のオリックス戦では、6イニング自責点2と好投しながら白星はつかず、今季2敗目を喫している。

4月8日のオリックス戦では、6イニング自責点2と好投しながら白星はつかず、今季2敗目を喫している。

 5月で44歳になる楽天・下柳剛の今シーズンはテスト生からのスタートだった。昨季9000万円あった年俸は1500万円まで激減。それでも現役続行にこだわった。

 '03年に阪神がセ・リーグを制したとき、下柳はローテーションを守り、二桁勝利を挙げた。当時の監督だった星野仙一と、投手コーチだった佐藤義則が楽天にいるため、一部から“縁故採用”という声が上がったとき、佐藤はこう言い切った。

「必要でなければ獲るわけがない。そんなことをしたら自分で自分の首を絞めるだけ。修羅場を潜り抜けてきた下柳の経験は必ず役に立つ」

 40歳でノーヒットノーランを達成、44歳まで現役を続けた佐藤コーチの言葉には説得力がある。

 キャンプ地の久米島では、早朝のブルぺンで黙々と投げる下柳の姿があった。前日、指の掛かり具合が納得できなかったため、他の選手たちが出てくる前に調整していたというのだ。

田中将大の負担が大きいなか、星野監督が下柳にかける期待。

「必要とされなくなればクビになるだけ」

 22年目のベテランはすべてを心得ている。

 社会人の新日鐵君津を経て、'91年にダイエーに入団。一軍に定着したときの監督は根本陸夫、投手コーチは権藤博だった。根本は「駄馬はたくさん投げるしかない」と、試合で使って鍛え上げた。入団4年目に62試合に登板すると、日本ハムに移籍してからも'97年から3年連続で60試合以上マウンドに上がった。阪神で先発の柱として活躍した全盛期を超えて、老齢期に入った今、「ごまかして上手にボール球を振らせること。でもこれが一番難しいね」と本人は笑う。

 今季に懸ける男は、身上である外角低めへのボールの出し入れ、それを活かすための内角球のコントロールに改めて取り組むと、オープン戦3試合で11イニングを投げ、失点はわずか1。結果を出して開幕ローテを掴んだ。

 今季から中日の投手コーチを務める権藤とオープン戦で再会したとき、下柳はこう言われたという。

「野球人、ユニフォームを着てナンボだぞ」

 田中将大にかかる負担が大きい楽天投手陣にあって、下柳の存在は大きい。

「困ったときのベテラン頼みやな」

 そう言って、星野監督はフッとため息をついた。

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