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ジェレミー・リン旋風。
~NBAの枠を超え全米が熱狂~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2012/03/30 06:00

ジェレミー・リン旋風。~NBAの枠を超え全米が熱狂~<Number Web> photograph by Getty Images

身長191cmと、NBA選手としては恵まれた体格とは言えないジェレミー・リン。卓越したボディバランスを活かしたパスやティアドロップシュートを得意としている。

 日本と米国のスポーツ報道で、いま、最も知名度に差のある選手――それは、NBAニューヨーク・ニックスのジェレミー・リンだ。今季、文字通り彗星のようにスターの座についた台湾系米国人のポイントガード。今年の2月に抜擢され、まだ2カ月しかたっていない。しかし、いま北米4大プロスポーツで最もホットな選手だ。「リン現象」と呼ぶべきものを並べてみると、次のようになる。

  (1)ユニホームの売り上げが、コービー・ブライアントらを抜いて全NBA選手の中でNo.1に。
  (2)ニックスの試合を中継しているMSGネットワークが、リンの出場試合で史上最高視聴率7.3%を記録。過去最高は'95年3月28日、マイケル・ジョーダンが現役復帰した時のブルズ戦だった。
  (3)2月27日発売のタイム誌表紙を飾る。
  (4)リンの活躍が始まったあとマジソン・スクエア・ガーデンの株価が最大12%上昇。

全米的な熱狂を呼んでいる三つの理由。

 なぜ、これほど全米的な熱狂を呼んでいるのか。理由は三つある。一つは、NBAではアジア系選手の活躍自体が珍しいこと。二つ目は、バスケットボールの強豪校ではなく、名門ハーバード大学を出ていること(専攻は経済学)。そして三つ目は、スター選手の補強を繰り返しながら勝てるようにならず、今季も開幕から低迷してニューヨーカーを失望させていたニックスが、彼の活躍で勝ち始め、プレーオフ圏内まで浮上してきたことだ。

●NBAニックスの新星 ジェレミー・リンの快進撃
月日 勝敗 相手 出場時間 得点 2点
シュート
3点
シュート
R A S TO
2.4 ネッツ 36分 25 53 0 5 7 2 1
6 ジャズ 45分 28 64 33 2 8 2 8
8 ウィザーズ 36分 23 64 0 4 10 1 2
10 レイカーズ 39分 38 58 50 4 7 2 6
11 Tウルブズ 39分 20 33 0 6 8 3 6
14 ラプターズ 43分 27 39 100 2 11 1 8
15 キングス 26分 10 67 0 5 13 0 6
17 ホーネッツ 40分 26 46 40 2 5 4 9
19 マーベリックス 46分 28 57 50 4 14 5 7
20 ネッツ 36分 21 36 50 7 9 4 3
22 ホークス 32分 17 56 50 2 9 2 4
23 ヒート 34分 8 9 0 6 3 3 8
※R=リバウンド、A=アシスト、S=スチール、TO=ターンオーバー。得点、A、S、TO の太字はチーム内で最多の数字。表は後半戦が始まる前の2月27日時点。

 ハーバード大学卒の無名のアジア人青年が、米国最大の都市ニューヨークでニックスの救世主に――これはNBAファンの枠を超えて、米国人の関心を引くストーリーだったわけだ。

 リンは1988年8月23日、カリフォルニア州の生まれ。両親は台湾の出身で、いわゆる台湾系二世ということになる。

 高校を卒業する時、地元カリフォルニアの大学にバスケットボール奨学生として進学を希望したが、評価されず、奨学金を断念してハーバード大学へ。大学卒業時もNBAのドラフトにはかからず、一昨年、ドラフト外でウォリアーズと契約した。だが出場わずか29試合で解雇。今季はニックスと契約したものの、2月3日までは出場9試合(全23試合)、平均プレー時間は6分程度に過ぎなかった。

 ニックスは、昨季NBAファイナルを制したマーベリクスから年俸1260万ドル(約10億800万円)のタイソン・チャンドラーを獲得しながら、2月3日時点で8勝15敗だった。プレーオフ進出の可能性も風前の灯となったこの時、マイク・ダントーニ監督はリンの起用を決断した。

【次ページ】 ディフェンスが厳しくなる中、どう対応していくのか。

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