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<2012日本男子ゴルフツアー展望> 鎖国化を食い止める石川遼と3人の男たち。 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byGetty Images

posted2012/03/22 06:01

<2012日本男子ゴルフツアー展望> 鎖国化を食い止める石川遼と3人の男たち。<Number Web> photograph by Getty Images

石川遼――今季米ツアー5戦目のプエルトリコ・オープンは単独2位。出場試合数制限が解除される特別一時会員資格を得た。

海外の各ツアーが連携し、グローバル化するのと逆行するように
閉鎖感を強める日本ツアー。欧米で活躍する日本人が減るなか、
世界を意識し、戦い続ける4人の男に迫った。

 コースの芝は青々と色づき、桜のつぼみがふんわりと膨らみ始めた。ゴルファーにとって愛すべきシーズンの到来、それは国内男子ツアーの開幕の季節でもある。しかしそんな晴れがましさと似つかわしくなく、くすぶっているものがある。今季もツアーの最前線に立って戦うであろう石川遼の心情である。

 複雑な気持ちがあらわになったのは3月の米ツアー遠征中、4月のマスターズに特別招待されるというニュースが届いた時だった。石川の見せた反応が単純な喜びだけに満ちたものではなかったからだ。

「マスターズに出るのは自分だけの問題ではないんです。最近は日本人で大会に出場できる選手がどんどん減ってきている。これは日本のゴルフ界にとっては相当な危機じゃないか。それを誰が変えていくんだと言ったら、変えていける選手は限られると思ってます」

 1年4カ月もの間、優勝から見放されていることからくる個人的な焦りとは違う。日本ツアーの現状を憂いた言葉だった。

 もし石川が特別招待を受けていなければ、日本からの出場選手はアマチュアの松山英樹(東北福祉大2年)ただ一人だった。半世紀ぶりに、世界が注目するゴルフの祭典に日本人プロが誰もいない非常事態になるところだったのである。

日本で戦う選手にとっては、メジャー出場へのハードルは一層高く。

 日本ツアーの“今そこにある危機”。

 競技としての魅力に乏しいわけではない。

 1つ1つのゲームをつぶさに観れば、ドラマとスリルはあふれている。ただし、世界における競争力の低下はどうにも否定できない。

 世界の主要ツアーが集まって行なわれるフェデレーション会議では、日本への世界ランクポイントの配分の多さがいつも議題になるという。メジャーでの不振ゆえに、日本勢は世界ランクと実力が釣り合っていないと見られているのだ。一昨年からは国内のスポンサーに配慮した結果、世界ゴルフ選手権シリーズが国内賞金ランクへの加算試合から除外された。日程の重なる国内の試合を有力選手が欠場しないようにとの措置だが、これは世界の流れとはまるで逆行している。

 全米オープンは今年から規定が変わり、日本の賞金ランク1、2位に付与される出場資格が消えた。日本で戦う選手にとってメジャー出場へのハードルは一層高まったことになる。9年間に渡って米国でプレーし続けた丸山茂樹が主戦場を日本に戻し、米ツアーを主戦場にする日本人もいまや米国育ちの今田竜二しかいない。

【次ページ】 世界とリンクしていける選手は誰なのか。

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