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イチローと松井秀が開幕早々苦悩中。
マリナーズとエンゼルスの弱点とは? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2010/04/17 08:00

イチローと松井秀が開幕早々苦悩中。マリナーズとエンゼルスの弱点とは?<Number Web> photograph by KYODO

開幕前にはお互いにチームの好調を認め合っていたイチローと松井。序盤戦のつまづきをふたりの打棒で取り返して欲しいところ

エンゼルス不振の理由は2番打者のアブレイユにあり。

 フィギンスを引っこ抜かれたエンゼルスは打線の改造に迫られた。1番にアイバーを置き、4番のゲレーロに関してはケガの不安が大きいため、松井秀喜を獲得して埋め合わせを図った。

 1番のアイバーは四球をよく選んでいて、出塁率も昨シーズンのフィギンス並みの数字を確保している。いかにもエンゼルスの1番らしい仕事をしている。

 しかしアブレイユが9試合終了時点で選んだ四球がわずかひとつ、しかも出塁率が3割にやっと手が届くという具合で、「テーブルセッター」の役割が果たせていない。その反面、ここまでアブレイユは打点が多く、じっくり好球を待つというよりは、チャンスを広げようとして打撃が雑になっているように思われる。

 エンゼルス浮上のカギ、それはアブレイユが四球を選べるほどの余裕を打席で持てるか――。そこにひとつ、ポイントがある。

 アイバー、アブレイユが出塁さえすれば、3番ハンターは好調を維持しており得点力が増すのは確実。

 開幕以来、印象的な働きをしている松井だが、ヤンキース戦では抑え込まれた印象だ。

 これからの対戦チームはヤンキース投手陣の配球を研究して、松井の膝に負担のかかる緩い変化球をうまく織り交ぜながら投球を組み立ててくるだろう。それに対し、松井がいかに対応するかが今後のエンゼルスの成績に直結する。

重症か? 同時多発性不調に陥ったマリナーズ打線。

 一方のマリナーズだが、打線が「重症」だ。ここまで状態が悪くなるとは想像できなかった。10試合を戦った時点で合格点をつけられるのはグティエレスだけだ(昨シーズンのオフ、彼と格安で契約延長を勝ち取ったのはマリナーズGMのお手柄)。

 マリナーズの不振の種は多発性のもので、まずイチロー、フィギンスの1、2番の出塁率が低い。

 イチローはもともと四球を選ぶタイプではないので、とにかくヒットで塁に出るしかないのだが、本調子とは程遠い。フィギンスは中旬に入って調子が上向いており、テーブルセッターとしての役割を十分に果たしていくだろう。

 そして最大の問題は、レフトと指名打者の使い方である。これまでのところ、右投手が相手の時はDHにグリフィー、レフトに新加入のスイッチヒッターのブラッドリーを入れる。左投手の場合はDHにブラッドリー、またはベテランのスウィーニーというパターンもある。レフトは新加入のバーンズ、スウィーニーがDHに入る場合はブラッドリーがそのままレフトを守るケースもある。

 困ったことに、期待のブラッドリーが打率1割台と低迷。グリフィーは5番を打っているが、残念ながら5番の働きには見合わない。

 おそらくワカマツ監督はブラッドリー、グリフィーを辛抱強く使い続けるはずだ。それまで首位との差があまり離れなければいいのだが……。

 こうした問題が一気に解決することは考えづらいだけに、投手陣の踏ん張りに期待するしかないのだ。

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