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3度目のW杯出場に懸ける稲本潤一。
セルビア戦を冷静に振りかえると……。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byToshiya Kondo

posted2010/04/17 08:00

3度目のW杯出場に懸ける稲本潤一。セルビア戦を冷静に振りかえると……。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

欧州で7つのクラブを渡り歩き欧州サッカーを知りつくす稲本。日韓W杯のベルギー戦、ロシア戦で得点した男でもあり、ドイツW杯でも玉田圭司のゴールを演出してもいるのだが

日本らしさを出せず、負けるべくして負けたセルビア戦。

 失点シーンは、不運とミスが連鎖した面もあるが、それ以上に気になることがあった。日本は、セルビアとの1対1の競り合いで、ほとんど負けていた。球際の激しさもセルビアの選手たちと異なり、明らかに迫力を欠いていた。W杯で戦うオランダやカメルーンら強豪国の選手は、これ以上のフィジカルコンタクトで挑んでくる。

「欧州の選手との戦いは久しぶりやったけど、体をぶつけ合う競り合いはほとんど負けていたね。ちょっとショックやったけど、日本のサッカーはそういうところで人数をかけて戦うのがコンセプト。けど、それがまったく出来ていなかった。プレスに行ってもうまいことかわされて、ロングボールで前に起点を作られた。そういう時は前でしっかり潰すことが大事やねんけど、当たりでは負けるし、動けないから後手を踏む。どうしたらええんやろって、みんなバラバラに動いていたんで、これじゃ何もできないでしょ」

「ボロ負けしたのを教訓として、必死に頑張るしかない」

 個々の戦いに敗れ、チーム全体としても機能せずに0-3で敗れた。メンバー発表前のホームでの惨敗。稲本は、この敗戦をどう捉えているのだろうか。

「世界との差がまだまだあると目が覚めたと思う。それに、これだけのフィジカルの強さや守備のうまさは、Jリーグにはない。Jリーグで出来ているから満足するんじゃなく、日頃の練習から常に世界を意識して、その意識を高めていく必要がある」

 試合後、スタジアムを1周した時、容赦ないブーイングが突き刺さった。

「この結果やったらしゃーないでしょ。俺らは、この結果もブーイングも素直に受け止めていかなあかんと思う。そして、今日、戦ったメンバーが何を感じているかってことでしょ。何も感じへん、変わらへんかったら成長はないし、世界じゃ戦えへん」

 深刻な眼差しは、伸び悩むチームの現状を憂えていた。確かに、日韓大会やドイツ大会の1カ月前と現況を比較すると絶望的なほど完成度は低い。

「そりゃ危機感はあるよ。でも、ここからどんだけ盛り上げていけるか。俺は、気持ちの問題やと思う。ボロ負けしたのを教訓として、本番まで必死に頑張るしかない」

【次ページ】 Jリーグで戦う稲本に3大会連続出場の朗報は届くか?

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