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名門も続々撤退する、
生産牧場の“苦境の真相”。
~長引く不況と地方競馬の衰退~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byKeiji Ishikawa

posted2012/02/26 08:00

ウオッカでダービーを制覇した際の谷水代表(左端)。日本馬主協会連合会最高顧問も務める

ウオッカでダービーを制覇した際の谷水代表(左端)。日本馬主協会連合会最高顧問も務める

 名牝ウオッカ(8歳)をはじめ、4頭ものダービー馬を輩出したカントリー牧場(北海道新ひだか町)が、競走馬の生産部門と育成部門の両方を売却した。

 1963年の創業から続いた名門牧場の看板を下げる決断をしたことを、谷水雄三代表が自ら記者会見を開いて発表。72歳の谷水代表は「オーナーブリーダーとして結果を出し続けるためには、10年先、20年先を見据えて行動しなければいけない。そう考えると私も少し年をとり過ぎたのかも。ウオッカの引退をきっかけに、いいイメージのままで撤退したいと思いました」と、その理由を語った。

 昨年のメジロ牧場完全閉鎖のときのような悲壮感漂う会見とは違い、「競走馬の所有は継続します。ウオッカの子はもちろん私が所有して日本で走らせます」と、前向きな言葉で締めくくられた。ウオッカは、引退後アイルランドにあるアガ・カーン殿下所有の牧場で繁殖生活を送っており、近々2頭めを出産し、今春も3年連続で欧州一の人気種牡馬シーザスターズと交配する予定という。

社台グループへの一極集中は批判されるべきではないが……。

「経済的な理由ではない」と殊更に強調されていたが、決して小規模でもない牧場が2年続けて廃業の決断に至ったという事実は重い。こうした牧場の苦境には、長引く不況で地方競馬がバタバタと廃止に追い込まれていることが影響している。競走馬の供給過剰の状態が慢性化し、構造的な生産不況に陥っているのだ。

 サラブレッドなどの軽種馬の生産頭数は、ピークだった'92年の1万2874頭から徐々に減り、'11年の集計では7085頭となった。今も昔も中央競馬に登録される馬は一世代でざっと4000頭と大きな変化はない。生産総数が減っても、地方競馬という下部組織の受け皿がそれ以上に小さくなってしまっていることで、生産者たちは売れ残りに苦しんでいる。

 興味深い数字が「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」の統計データベースにある。全体の繁殖牝馬の数は'05年以降10%ほど減ったのに、社台ファーム、ノーザンファーム、白老ファーム、追分ファームの、いわゆる社台グループが居を構える胆振地区では逆に約13%も増加しているのだ。勝負の世界において勝ち組は批判されるべきではないが、一極化が過ぎるのは当事者たちもあまり居心地がよくないのではないか。

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