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7つのアプローチで、
最強バルサの魅力を読み解く。
~“ブーム”を物語る関連本ラッシュ~ 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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posted2012/02/17 06:00

7つのアプローチで、最強バルサの魅力を読み解く。~“ブーム”を物語る関連本ラッシュ~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『グアルディオラのサッカー哲学』(写真中央)は、遠藤保仁選手も「最強チームを率いる監督の姿勢に凄く刺激を受けた」と絶賛している

 書店に並ぶいくつものFCバルセロナ関連本が、日本サッカー界に充満する空前の“バルサブーム”を物語っている。では、改めてバルサの魅力とは何か。その全貌を探るべく、ジャンル別に7つの作品を手に取ってみた。

 まずは『バルサ、バルサ、バルサ!』(カルラス・サンタカナ・イ・トーラス著)を開き、このクラブを語る上で欠かせない「歴史・政治論」を読み解く。バルサにとってフランシスコ・フランコによる独裁政治が終幕へと向かった'68~'78年の11年間は、クラブのアイデンティティーを確立するために非常に重要だった。ヨハン・クライフの加入、フランコの死去、ソシオ会員による選挙の実施……。歴史、政治、サッカーが複雑に絡み合い、やがて“理想のクラブ”が確立されていく様は実に興味深い。

 続いては、クラブの「指導論」に触れてみる。これは『グアルディオラのサッカー哲学』(フアン・カルロス・クベイロ他著)に詳しい。

「グアルディオラの大きな功績は、アヤックスが'70年代に確立し、'90年代前半にバルサの黄金期を彩ったサッカーを、現代化させたことにある」

 この一節の解説に、バルサのカンテラで育ち、選手としても監督としても大成したグアルディオラの成功秘話が隠されている。彼の人物像からその秘密を浮かび上がらせる、文字どおりのサッカー哲学書である。

『ゴールは偶然の産物ではない』で学ぶバルサの「経営論」。

 ファンも指導者も気になる「育成論」は『FCバルセロナの人材育成術』(アルベルト・プッチ・オルトネーダ著)を読んで納得。カンテラのテクニカル・ディレクターである著者によれば、リオネル・メッシやシャビ、アンドレス・イニエスタが育った土壌の豊かさは、技術的な指導よりも「人間教育」にあるという。そこに、このクラブがカンテラ出身の選手を重用する理由がある。

「戦術論」は、“戦術博士”としておなじみの著者による『バルセロナ戦術アナライズ』(西部謙司著)でピッチ内の複雑怪奇な事象を体系的に整理できる。後半に登場する具体的なシーンの解説、特に守備の戦術に関する解説はわかりやすく、「バルサのサッカーは論理的で数学的」との提言にもうなずける。

 さらに「経営論」にも手を広げてみよう。この言葉に小難しさを感じる人も、『ゴールは偶然の産物ではない』(フェラン・ソリアーノ著)なら頭に入りやすい。健全かつ野心的な経営とピッチ上の結果は、イコールで結ばれてしかるべき。根っからのビジネスマンにしてバルサを救った著者の言葉は、シンプルで理解しやすく、示唆に富んでいた。

【次ページ】 バルサスクール福岡校のコーチによる独自の提言。

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